ネギまとFateのクロスオーバー小説を書いていこうと思ってます。
カレンダー
最新記事
(11/21)
(11/20)
(11/06)
(10/21)
(10/18)
カウンター
プロフィール
HN:
蒼海
性別:
非公開
自己紹介:
細々と生きてます。
メール:
endlesswind@hotmail.co.jp
@を半角にして送ってください。
メール:
endlesswind@hotmail.co.jp
@を半角にして送ってください。
最新コメント
最新トラックバック
ブログ内検索
アクセス解析
話の発端は、イギリス、魔法学校からの一通のエアメール。
『ひさしぶりネギ。元気にしてる?』
封をあけ手紙にある再生ボタンを押すと、そこにネギの姉の姿が立体映像で現れる。
「わあー、お姉ちゃんからだ」
「わっ、何コレ。さすが魔法使いねー」
『ちゃんと先生になれたのね、おめでとう。でも、これからが本番だから気を抜かずにがんばってね』
久しぶりに聞く姉からの激励にネギの頬も自然と緩む。
『それと……ふふっ、ちょっと気が早いけどあなたのパートナーは見つかったかしら?魔法使いとパートナーは惹かれあうものだから、もうあなたの身近にいるかも知れないわね』
「パートナー?」
『修業の期間中に素敵なパートナーが見つかることを祈ってるわ』
くすり、と小さな微笑みを残して映像は止まる。
「パートナーかあー。やだなお姉ちゃん、僕にはまだ早いよー」
「ちょっとぉー何よネギパートナーって。恋人のコト? ガキの癖に生意気ねー」
「えっ、いえ、違いますよ!」
姉の台詞に照れるネギだったが、明日菜の恋人発言に慌てて説明を始める。
「僕たち魔法使いの世界に伝わる古いお伽噺で…、世界を救う一人の偉大な魔法使いと、それを守り助けた一人の勇敢な戦士の話があるんです。そのお話にならって今でも社会に出て活躍する魔法使いにはそれをサポートする相棒、 『魔法使いの従者』と呼ばれるパートナーがいるのがいいと思います。特にマギステル・マギになるんだったらパートナーの一人もいないと格好つかないんですよ」
「へー、パートナーねー。それってやっぱり女の子? てゆーか異性なの?」
「はい。やっぱり男の魔法使いだと綺麗な女の人、女の魔法使いだと格好いい男の人がいいですよねー。で、今だと大体パートナーと結婚しちゃう人が多いんですけど」
「じゃ、やっぱ恋人みたいなもんじゃんー」
「へー、ネギ君実は恋人探しに日本に来たん? じゃあウチのクラスの女の子だけでも30人やからよりどりみどりやな」
「い、いえ、だから違うんですって…」
明日菜に引っ張られていた頬をさするネギだったが、ふと、今のやりとりが対面の相手ではないことに気付く。
「わーーっ、このかさん!?」
「木乃香、いっ、いつから聞いて……!?」
「?」
二人して飛びのくという極めて挙動不審な行動を取るネギと明日菜を、木乃香は不思議そうな目で見る。
「途中からやけど何の手紙なんそれ?」
「何でもないです! 何でもないですよぅ」
ネギは何とかその場を誤魔化そうと四苦八苦する。
しかし、その努力を無に帰すかのように木乃香がドアを開け叫ぶ。
「みんなー、ネギくん恋人探しに日本来たらしいえー」
「違います! 本当に先生やるために来たんですよーっ!」
「冗談やネギ君」
涙ながらに声を被せるネギにスマンスマンと謝った後、木乃香は話の矛先を明日菜に向ける。
「アスナ、おじいちゃんが呼んどるから行ってくるわー」
「えー、あの あの話?」
「せやー」
全てを言わずとも理解する明日菜と、それに困ったような顔で答える木乃香。
「? 何の話ですか?」
一方、話が見えないネギだったが、ともかく部屋を後にする木乃香を見送りに玄関まで出る。
「フー、でも驚いた」
「バレたかと思いましたよ」
木乃香の姿が見えなくなったのを確認して、ネギと明日菜安堵の息を洩らしドアを閉める。
バタン、と音が響く。
再び静かになった廊下。
そこに小さな話し声が二つ。
「……聞いた?」
「聞いたです」
「ハァ、ハァ、ハァ」
「お嬢さまー、どこですかー!?」
「もー、しつこいなー。ネギ君、こっちこっち」
「は、はい」
背後から届く呼び声に少女はかわいらしい不満を零しつつネギの手を引き、裾がはためくのも構わず春休みの校舎の中を逃げ回る。
無人の校舎に二つの足音が響く。
あちこち走り回っているうちに自然と足が向いていたのだろう、ふと顔を上げた先には二年A組の文字が刻まれたプレート。
背後から届く声が無くなったのを好機と見て、彼女はドアに手をかけ、教室へと飛び込む。
「ふぅ……」
「はぁ……」
「───ネギ君と、このかちゃん?」
一息ついていた二人は、無人のはずの教室で自分達の名前を呼ばれ顔を上げる。
その先には、見慣れた副担任の姿。
鉛筆が机の上をコロコロと転がり、床に落ち乾いた音を響かせる。
「あ、士郎さん、おはようございます」
「おはよー」
「おはよう」
「こんなところで何してるんですか?」
「そうだなぁ……」
落ちた鉛筆を拾い上げながら、士郎は言葉を探す。
「探し物、かな?」
「探し物ですか? それなら僕も手伝いましょうか?」
「大丈夫、もう目的の物は見つかったんだ。あ、物って言っちゃまずいか」
「?」
教室の一点を見、一人自分の言葉を訂正する士郎に、木乃香とネギも視線の先に目を向けるが、そこには何もなく、二人は揃って首を捻る。
そんな二人に何と言ったらしたらいいか思案するが、結局いい言葉が見つからず、士郎は話を濁す。
「いや、こっちの話。それより二人こそどうしたの? 特にこのかちゃんは着物なんか着てるけど」
「あはは……」
「実はなー、お見合い用の写真撮らされそうになって逃げてきてもーてな。いま逃げてるところなんよ」
バツが悪そうに彼方を見て笑うネギに対し、いつもとは違う色鮮やかな着物を身に纏う木乃香は、しかし常日頃の屈託のない口調で、およそ中学生らしからぬ単語を口にする。
「お見合い?」
「そーなんや。おじーちゃんがお見合い趣味でな、いつも無理矢理勧められるんよ」
「……。学園長は何をやってるんだか……」
思わず零した感想に木乃香も同じく困ったものだといった表情を作る。
すると、聞き役に廻っていたネギがおずおずと訊ねる。
「あの、お見合いって何ですか?」
「そうやなー、見合いゆーんは結婚相手、つまり将来のパートナーを探す日本の習慣やな」
「え、パートナーですか?」
「ほら、相手の写真もこんなよーけあるんよ」
「わー、スゴーイ!」
机の上にズラリと並んだお見合い写真に思わずネギが歓声を上げる。
一方士郎はその中から一枚を手にとり、中の写真とプロフィールをまじまじと見つめた後一言。
「全く、普通中学生にこんな歳の離れたお見合い相手を探してくるか?」
「士郎さんもそう思うやろ? まだウチ子供やのに、将来のパートナー決めるなんて早すぎると思うんよ」
「うん、そうですよね! わかります、このかさん」
素直な心情の吐露に思うところがあったのか強く同意するネギに、木乃香はそう言えば、と思い出す。
「ネギ君もパートナー探し中やったっけ」
「そうなんだ?」
「そうなんよ。実はネギ君、パートナー探しに日本に来たらし───」
「ち、違いますっ! 違いますよ士郎さん! あれはただお姉ちゃんが手紙でそう言ってただけで───」
「そうか」
すべて理解したように士郎はその小さな肩にポン、と手をのせると、 イイ笑みを向ける。
「パートナー、見つかるといいな。ネギ君」
「し、士郎さーん! だから違うんですってばー!」
「わかってるって」
「そうそう。冗談や、冗談」
「もう、士郎さんもこのかさんも!」
「ごめんごめん」
「スマンスマン」
半泣きかつ顔を朱に染めるネギに、士郎と木乃香は頬を緩めながらその頭を撫で宥める。
「そや! お詫びにネギ君のパートナーどんなんがええか占ったげるえ」
「え、占い、ですか?」
「うん。ウチ占い研の部長やねん」
「あ、そうでしたね」
「準備するから、そこに座っててな」
ネギを向かいに促し、木乃香は懐から水晶玉と白い布を取り出し机の上にセットする。
続いてネギの手を取り、その感触を確かめるかのようにゆっくりと触っていく。
どことなく不思議な雰囲気がその場を包む。
「ふむふむ、なるほどー」
「ど、どうですか?」
「ネギ君の将来のパートナーはなー……、ものすごく近くにいます」
「えっ……」
「その人はこの春休みまでにちょっとでも仲良くなった女の子やな」
「ふむふむ」
次に木乃香は水晶に目を向ける。
「あらややなあ。ネギ君今日までにその子のパンツを見とるえ」
「え゛っ…、パ、パンツ!?」
「………」
朗らかな笑顔の木乃香に比べ、心当たりがあるのかあからさまに動揺するネギ。
「んー、そしてその子はツインテールと鈴がチャームポイントのちょっと乱暴者な女の子やな」
ブーーッ、と盛大に吹き出すネギ。
同時に辺りの空気も一気に崩れ落ちる。
「それってまんまアスナさんじゃないですかー! 無理矢理占わないでくださいよー!」
「アハハ、今のは冗談や。でもネギ君、アスナのこと好きやろー?」
「なっ…、すっ…、すすす好きじゃないですよー別にーー!」
「あはは、ネギ君顔まっ赤やでー」
その言葉通りネギは顔を真っ赤に染め、手を振り回しながら袖を摘んで逃げる木乃香を追いかける。
が、それも腕の長さを活かし木乃香が頭を抑えるまでで、抑えられたネギはジタバタともがくことしか出来ない。
「最近ネギ君とアスナ仲えーやん」
「そそ、そんなことないですよ」
「そーけ? アスナもまんざらでもなさそう……、てゆーか最近は嬉しそうだけど。それになネギ君、ウチもな……」
「え……」
多少落ち着いたネギの頭から手を放すと、そのまま両手でそっと包み込む。
「ネギ君来てから、カワイイ弟が出来たみたいで嬉しいえ」
「………このかさん……」
しばし呆けていたネギだったが、冷静になった頭がその台詞の言葉尻を捉える。
「ぼ、僕は弟じゃなくて先生ですよー」
「ネギ君また怒ったー」
今日何度目になるかわからない怒り、というには微笑ましい表情で追いかけるネギから逃げる木乃香だったが。
「あ」
自分の足が着物の裾を踏み、体が前方につんのめる。
後を追っていたネギも止まりきれず、木乃香につっかかり体勢を崩す。
引力に従い床へと倒れていく二人の体。
「──よっ、と」
それを、それまで静観していた士郎が右腕で木乃香を、左腕でネギを抱きとめ起き上がらせる。
「二人とも大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
「元気なのもいいけど程ほどにね。特に木乃香ちゃんはせっかく綺麗に着飾ってるんだから」
「あ……、うん」
しゃがみこみ、蹴躓いた際に着物の裾についた埃を払う士郎だったが、ふと、聞こえるか聞こえないか程度の物音がその耳に届く。
「……そういえば、木乃香ちゃんがここにいる理由は聞いたけど、ネギ君はどうしたの?」
「え? ぼ、僕ですか? え、えっとー、さっき話したパートナー探しのことがなぜかクラスのみんなに変な風に伝わっちゃったみたいで追いかけられちゃって」
「それでここまで逃げてきたって訳か」
「はい。……あの、それがどうかしたんですか?」
怪訝そうに首を傾げるネギに士郎は教室と廊下の間にある壁の一点を指差し、口を開く。
「どうやら、もうそこまで来てるみたいだけど」
「え……」
ネギの表情がさっと強張る。
士郎の指差した方向からは、微かにだが確かにネギの名を呼ぶ声と足音。
「す、すいません! このかさん、士郎さん、失礼します!」
言うが早いか、ネギは声が届く方向とは逆側のドアから脱兎の如く飛び出していく。
「ネギ君も大変やなー」
「……ちなみに、木乃香ちゃんの名前を呼んでる人もいるみたいだよ」
「え…」
それを裏付ける様に、ネギを探す多数の声の中にこのかお嬢様ー、という響きが混ざりだす。
「あかん、ウチも逃げな」
「あ、このかちゃん、ストップ」
「え? きゃ──」
ネギと同じように教室を後にしようとする木乃香を引きとめた士郎は、その肩と膝裏に腕を回すと、そのままお姫様抱っこの形で抱きかかえる。
「し、士郎さん、何するん?」
「何って、見ての通りだけど? 逃げるっていってもその格好じゃさっきみたいに転んで怪我するかもしれないでしょ」
「せ、せやけど、今ならそんな焦らんでも逃げれるよ」
「そうかもしれないけど、だからって放っておく訳にもいかないさ」
「せやけどせやけど──」
あわあわと言葉を捜す木乃香だったが、首を傾げる士郎にやがてしおらしく小さな声で囁く。
「……ウチ、重くない?」
「まさか」
士郎は木乃香を抱えた腕をまるで重さを感じさせずに軽々と胸の高さまで上げてみせる。
「ね?」
「……うん」
「じゃあ行くよ」
木乃香は桜色に染まった顔をこくん、と小さく縦に動かす。
それを見、さきほどよりざわつきが響く廊下に向けて士郎は走り出した。
封をあけ手紙にある再生ボタンを押すと、そこにネギの姉の姿が立体映像で現れる。
「わあー、お姉ちゃんからだ」
「わっ、何コレ。さすが魔法使いねー」
『ちゃんと先生になれたのね、おめでとう。でも、これからが本番だから気を抜かずにがんばってね』
久しぶりに聞く姉からの激励にネギの頬も自然と緩む。
『それと……ふふっ、ちょっと気が早いけどあなたのパートナーは見つかったかしら?魔法使いとパートナーは惹かれあうものだから、もうあなたの身近にいるかも知れないわね』
「パートナー?」
『修業の期間中に素敵なパートナーが見つかることを祈ってるわ』
くすり、と小さな微笑みを残して映像は止まる。
「パートナーかあー。やだなお姉ちゃん、僕にはまだ早いよー」
「ちょっとぉー何よネギパートナーって。恋人のコト? ガキの癖に生意気ねー」
「えっ、いえ、違いますよ!」
姉の台詞に照れるネギだったが、明日菜の恋人発言に慌てて説明を始める。
「僕たち魔法使いの世界に伝わる古いお伽噺で…、世界を救う一人の偉大な魔法使いと、それを守り助けた一人の勇敢な戦士の話があるんです。そのお話にならって今でも社会に出て活躍する魔法使いにはそれをサポートする相棒、
「へー、パートナーねー。それってやっぱり女の子? てゆーか異性なの?」
「はい。やっぱり男の魔法使いだと綺麗な女の人、女の魔法使いだと格好いい男の人がいいですよねー。で、今だと大体パートナーと結婚しちゃう人が多いんですけど」
「じゃ、やっぱ恋人みたいなもんじゃんー」
「へー、ネギ君実は恋人探しに日本に来たん? じゃあウチのクラスの女の子だけでも30人やからよりどりみどりやな」
「い、いえ、だから違うんですって…」
明日菜に引っ張られていた頬をさするネギだったが、ふと、今のやりとりが対面の相手ではないことに気付く。
「わーーっ、このかさん!?」
「木乃香、いっ、いつから聞いて……!?」
「?」
二人して飛びのくという極めて挙動不審な行動を取るネギと明日菜を、木乃香は不思議そうな目で見る。
「途中からやけど何の手紙なんそれ?」
「何でもないです! 何でもないですよぅ」
ネギは何とかその場を誤魔化そうと四苦八苦する。
しかし、その努力を無に帰すかのように木乃香がドアを開け叫ぶ。
「みんなー、ネギくん恋人探しに日本来たらしいえー」
「違います! 本当に先生やるために来たんですよーっ!」
「冗談やネギ君」
涙ながらに声を被せるネギにスマンスマンと謝った後、木乃香は話の矛先を明日菜に向ける。
「アスナ、おじいちゃんが呼んどるから行ってくるわー」
「えー、あの
「せやー」
全てを言わずとも理解する明日菜と、それに困ったような顔で答える木乃香。
「? 何の話ですか?」
一方、話が見えないネギだったが、ともかく部屋を後にする木乃香を見送りに玄関まで出る。
「フー、でも驚いた」
「バレたかと思いましたよ」
木乃香の姿が見えなくなったのを確認して、ネギと明日菜安堵の息を洩らしドアを閉める。
バタン、と音が響く。
再び静かになった廊下。
そこに小さな話し声が二つ。
「……聞いた?」
「聞いたです」
「ハァ、ハァ、ハァ」
「お嬢さまー、どこですかー!?」
「もー、しつこいなー。ネギ君、こっちこっち」
「は、はい」
背後から届く呼び声に少女はかわいらしい不満を零しつつネギの手を引き、裾がはためくのも構わず春休みの校舎の中を逃げ回る。
無人の校舎に二つの足音が響く。
あちこち走り回っているうちに自然と足が向いていたのだろう、ふと顔を上げた先には二年A組の文字が刻まれたプレート。
背後から届く声が無くなったのを好機と見て、彼女はドアに手をかけ、教室へと飛び込む。
「ふぅ……」
「はぁ……」
「───ネギ君と、このかちゃん?」
一息ついていた二人は、無人のはずの教室で自分達の名前を呼ばれ顔を上げる。
その先には、見慣れた副担任の姿。
鉛筆が机の上をコロコロと転がり、床に落ち乾いた音を響かせる。
「あ、士郎さん、おはようございます」
「おはよー」
「おはよう」
「こんなところで何してるんですか?」
「そうだなぁ……」
落ちた鉛筆を拾い上げながら、士郎は言葉を探す。
「探し物、かな?」
「探し物ですか? それなら僕も手伝いましょうか?」
「大丈夫、もう目的の物は見つかったんだ。あ、物って言っちゃまずいか」
「?」
教室の一点を見、一人自分の言葉を訂正する士郎に、木乃香とネギも視線の先に目を向けるが、そこには何もなく、二人は揃って首を捻る。
そんな二人に何と言ったらしたらいいか思案するが、結局いい言葉が見つからず、士郎は話を濁す。
「いや、こっちの話。それより二人こそどうしたの? 特にこのかちゃんは着物なんか着てるけど」
「あはは……」
「実はなー、お見合い用の写真撮らされそうになって逃げてきてもーてな。いま逃げてるところなんよ」
バツが悪そうに彼方を見て笑うネギに対し、いつもとは違う色鮮やかな着物を身に纏う木乃香は、しかし常日頃の屈託のない口調で、およそ中学生らしからぬ単語を口にする。
「お見合い?」
「そーなんや。おじーちゃんがお見合い趣味でな、いつも無理矢理勧められるんよ」
「……。学園長は何をやってるんだか……」
思わず零した感想に木乃香も同じく困ったものだといった表情を作る。
すると、聞き役に廻っていたネギがおずおずと訊ねる。
「あの、お見合いって何ですか?」
「そうやなー、見合いゆーんは結婚相手、つまり将来のパートナーを探す日本の習慣やな」
「え、パートナーですか?」
「ほら、相手の写真もこんなよーけあるんよ」
「わー、スゴーイ!」
机の上にズラリと並んだお見合い写真に思わずネギが歓声を上げる。
一方士郎はその中から一枚を手にとり、中の写真とプロフィールをまじまじと見つめた後一言。
「全く、普通中学生にこんな歳の離れたお見合い相手を探してくるか?」
「士郎さんもそう思うやろ? まだウチ子供やのに、将来のパートナー決めるなんて早すぎると思うんよ」
「うん、そうですよね! わかります、このかさん」
素直な心情の吐露に思うところがあったのか強く同意するネギに、木乃香はそう言えば、と思い出す。
「ネギ君もパートナー探し中やったっけ」
「そうなんだ?」
「そうなんよ。実はネギ君、パートナー探しに日本に来たらし───」
「ち、違いますっ! 違いますよ士郎さん! あれはただお姉ちゃんが手紙でそう言ってただけで───」
「そうか」
すべて理解したように士郎はその小さな肩にポン、と手をのせると、
「パートナー、見つかるといいな。ネギ君」
「し、士郎さーん! だから違うんですってばー!」
「わかってるって」
「そうそう。冗談や、冗談」
「もう、士郎さんもこのかさんも!」
「ごめんごめん」
「スマンスマン」
半泣きかつ顔を朱に染めるネギに、士郎と木乃香は頬を緩めながらその頭を撫で宥める。
「そや! お詫びにネギ君のパートナーどんなんがええか占ったげるえ」
「え、占い、ですか?」
「うん。ウチ占い研の部長やねん」
「あ、そうでしたね」
「準備するから、そこに座っててな」
ネギを向かいに促し、木乃香は懐から水晶玉と白い布を取り出し机の上にセットする。
続いてネギの手を取り、その感触を確かめるかのようにゆっくりと触っていく。
どことなく不思議な雰囲気がその場を包む。
「ふむふむ、なるほどー」
「ど、どうですか?」
「ネギ君の将来のパートナーはなー……、ものすごく近くにいます」
「えっ……」
「その人はこの春休みまでにちょっとでも仲良くなった女の子やな」
「ふむふむ」
次に木乃香は水晶に目を向ける。
「あらややなあ。ネギ君今日までにその子のパンツを見とるえ」
「え゛っ…、パ、パンツ!?」
「………」
朗らかな笑顔の木乃香に比べ、心当たりがあるのかあからさまに動揺するネギ。
「んー、そしてその子はツインテールと鈴がチャームポイントのちょっと乱暴者な女の子やな」
ブーーッ、と盛大に吹き出すネギ。
同時に辺りの空気も一気に崩れ落ちる。
「それってまんまアスナさんじゃないですかー! 無理矢理占わないでくださいよー!」
「アハハ、今のは冗談や。でもネギ君、アスナのこと好きやろー?」
「なっ…、すっ…、すすす好きじゃないですよー別にーー!」
「あはは、ネギ君顔まっ赤やでー」
その言葉通りネギは顔を真っ赤に染め、手を振り回しながら袖を摘んで逃げる木乃香を追いかける。
が、それも腕の長さを活かし木乃香が頭を抑えるまでで、抑えられたネギはジタバタともがくことしか出来ない。
「最近ネギ君とアスナ仲えーやん」
「そそ、そんなことないですよ」
「そーけ? アスナもまんざらでもなさそう……、てゆーか最近は嬉しそうだけど。それになネギ君、ウチもな……」
「え……」
多少落ち着いたネギの頭から手を放すと、そのまま両手でそっと包み込む。
「ネギ君来てから、カワイイ弟が出来たみたいで嬉しいえ」
「………このかさん……」
しばし呆けていたネギだったが、冷静になった頭がその台詞の言葉尻を捉える。
「ぼ、僕は弟じゃなくて先生ですよー」
「ネギ君また怒ったー」
今日何度目になるかわからない怒り、というには微笑ましい表情で追いかけるネギから逃げる木乃香だったが。
「あ」
自分の足が着物の裾を踏み、体が前方につんのめる。
後を追っていたネギも止まりきれず、木乃香につっかかり体勢を崩す。
引力に従い床へと倒れていく二人の体。
「──よっ、と」
それを、それまで静観していた士郎が右腕で木乃香を、左腕でネギを抱きとめ起き上がらせる。
「二人とも大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
「元気なのもいいけど程ほどにね。特に木乃香ちゃんはせっかく綺麗に着飾ってるんだから」
「あ……、うん」
しゃがみこみ、蹴躓いた際に着物の裾についた埃を払う士郎だったが、ふと、聞こえるか聞こえないか程度の物音がその耳に届く。
「……そういえば、木乃香ちゃんがここにいる理由は聞いたけど、ネギ君はどうしたの?」
「え? ぼ、僕ですか? え、えっとー、さっき話したパートナー探しのことがなぜかクラスのみんなに変な風に伝わっちゃったみたいで追いかけられちゃって」
「それでここまで逃げてきたって訳か」
「はい。……あの、それがどうかしたんですか?」
怪訝そうに首を傾げるネギに士郎は教室と廊下の間にある壁の一点を指差し、口を開く。
「どうやら、もうそこまで来てるみたいだけど」
「え……」
ネギの表情がさっと強張る。
士郎の指差した方向からは、微かにだが確かにネギの名を呼ぶ声と足音。
「す、すいません! このかさん、士郎さん、失礼します!」
言うが早いか、ネギは声が届く方向とは逆側のドアから脱兎の如く飛び出していく。
「ネギ君も大変やなー」
「……ちなみに、木乃香ちゃんの名前を呼んでる人もいるみたいだよ」
「え…」
それを裏付ける様に、ネギを探す多数の声の中にこのかお嬢様ー、という響きが混ざりだす。
「あかん、ウチも逃げな」
「あ、このかちゃん、ストップ」
「え? きゃ──」
ネギと同じように教室を後にしようとする木乃香を引きとめた士郎は、その肩と膝裏に腕を回すと、そのままお姫様抱っこの形で抱きかかえる。
「し、士郎さん、何するん?」
「何って、見ての通りだけど? 逃げるっていってもその格好じゃさっきみたいに転んで怪我するかもしれないでしょ」
「せ、せやけど、今ならそんな焦らんでも逃げれるよ」
「そうかもしれないけど、だからって放っておく訳にもいかないさ」
「せやけどせやけど──」
あわあわと言葉を捜す木乃香だったが、首を傾げる士郎にやがてしおらしく小さな声で囁く。
「……ウチ、重くない?」
「まさか」
士郎は木乃香を抱えた腕をまるで重さを感じさせずに軽々と胸の高さまで上げてみせる。
「ね?」
「……うん」
「じゃあ行くよ」
木乃香は桜色に染まった顔をこくん、と小さく縦に動かす。
それを見、さきほどよりざわつきが響く廊下に向けて士郎は走り出した。
PR
Comment
第12話読ませていただきました
木乃香は、やはりというか何というか、可愛らしいですね
今回、士郎が見つけた探し物(物ではありませんが)が、
今後どのようなかかわりをもつことになるのか、楽しみです
次回も期待しています。更新お疲れさまでした
今回、士郎が見つけた探し物(物ではありませんが)が、
今後どのようなかかわりをもつことになるのか、楽しみです
次回も期待しています。更新お疲れさまでした
無題
見にきてみれば更新されてる~。
流石はフラグ職人の士郎さん、この話ではこのか嬢のみかと思うが実はさよちゃんも!?
ネギ達が教室に入ってきて転がった鉛筆っていうのもおそらくは、さよちゃん。
原作でも鉛筆回してますし。
ビックリして落としたって事でしょう、おそらく。
次回も頑張って下さい
流石はフラグ職人の士郎さん、この話ではこのか嬢のみかと思うが実はさよちゃんも!?
ネギ達が教室に入ってきて転がった鉛筆っていうのもおそらくは、さよちゃん。
原作でも鉛筆回してますし。
ビックリして落としたって事でしょう、おそらく。
次回も頑張って下さい
無題
「正義の赤い魔術使い」読ませていただきました。とても面白かったですよ。士郎の一歩引き、ネギを微笑ましく見守る様子がいいですね。このかも個人的に好きなキャラなので、フラグが立ったのも楽しみ。
長いこと更新していないみたいですが、続きを待っています。
長いこと更新していないみたいですが、続きを待っています。
この記事にコメントする
Trackback
この記事にトラックバックする: |