ネギまとFateのクロスオーバー小説を書いていこうと思ってます。
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士郎はこちらに飛ばされた経緯を簡単に説明する。
「なるほどのう…。つまり、魔法の実験の最中に誤ってこっちへ飛ばされたと、そういうことかのう?」
半信半疑といった感じの学園長。
「俺も確かなことは言えませんが、おそらくは」
「そんなことが可能なんですか?」
学園長と同じ心境らしく、戸惑ったような声の刹那に、士郎も同じように困ったような声で答える。
「いや、不可能なはずなんだけど、実際こっちとあっちは違うしなあ……」
「違うって具体的にどういうところが違うんだい?」
士郎が自身に言い聞かせるように言っていると、タカミチが興味深そうに訊ねる。
「とりあえずは魔法使い、かな。俺のいた世界では魔法使いは4人しかいないけど、魔術師が存在するんだ」
「どういうことだい?」
「いままで聞いた範囲では、こっちの世界だと魔術と魔法は同じものらしいけど、向こうは全くの別物なんだ。俺の世界の魔法っていうのは、どれだけ時間やお金、その時代の科学を費やしても達成不可能な奇跡のことで、それ以外はすべて魔術なんだ。だから、俺の世界では魔法使いは4人しかいないし、魔法使いと魔術師も全く別物なんだ」
「なるほどね」
「衛宮君。君が別世界から飛ばされたと証明できるものはあるかの?」
士郎の説明にタカミチが納得していると、それを黙って聞いていた学園長が口を開いた。
「証明できるもの、ですか」
士郎は自身の身なりを確認するが、証明できそうなものは見当たらない。
しいていえば聖骸布であるが、これで証明出来るとも思えない。
「……そうですね、証明になるかどうかはわかりませんが、魔術くらいなら」
「ふむ。では見せてもらってもいいかのう?」
「あ、その前に一つお願いがあるんですが」
「なにかの?」
「俺の魔術はかなり異端なので、俺の魔術のことは秘密にしてもらえますか?」
「あいわかった。3人もいいかの?」
近衛さんの言葉に頷く刹那とタカミチに、まあいいだろう、と言わんばかりに鷹揚に頷くエヴァンジェリン。
「それじゃ…、投影 開始」
創り出すは、陰陽の夫婦剣である干将莫耶。
どうぞ、と干将莫耶を差し出すが、学園長はそれを見て首を捻る。
「はて、衛宮君。魔法、いや魔術じゃったか。いつ使ったのかの? わしにはアーティファクトを取り出したようにしか見えんのじゃが」
「いえ、それが俺の魔術です。投影と言って、本物のレプリカを魔力で創る魔術で、その剣も俺の魔力 で創り上げたものです」
「な、なんじゃと!?」
目を見開く学園長に加えて。
「貴様、これを魔力で創ったと言うのか!? そんなことできるわけないだろう!?」
いままで静観していたエヴァンジェリンまでもが飛び掛らんばかりの勢いで詰め寄る。
その様子に、さきほどまで士郎の中にあった物静かなイメージが崩れ去っていくのを感じつつ、宥める。
「……まあ、落ち着こう、な?」
士郎の言葉に、自分がどういう状況なのか把握したのかエヴァンジェリンはふん、と不満げに鼻をならした後。
「貴様、いまのをもう一度やってみろ」
上からの言葉に、まだ知り合ってから短いながらもなんとなくらしいな、と感じ微笑むが、それがエヴァンジェリンには御気に召さなかったようで、むすっとした表情で催促する。
「笑ってないでさっさとやってみろ!」
「ああ、わかった。──投影 開始」
「………」
微笑みを収め、再び干将莫耶を投影し手渡すと、エヴァンジュリンはそれを穴があくほど観察する。
しばらく部屋に沈黙が下りるが、それは学園長によって打ち破られた。
「なるほどのう、確かに衛宮君は異世界から来たようじゃの」
「えっと、信じてもらえるんですか?」
信じてもらえるとは思っていなかったのだろう。
目を丸くして驚く士郎に、学園長は干将莫耶を指す。
「これを見せてもらっては、そう考えたほうが辻褄が合うからの。ところで衛宮君」
ほう、と息をつく間もなく学園長は質問を続ける。
「はい、なんですか?」
「物は相談なんじゃが、この学園で働く気はないかの?」
「「「「は?」」」」
4人がハモる。
その中で1人で悠然と笑う学園長に士郎は訊ねる。
「えーっと、近衛さん、どういうことですか?」
「詳しいことはわからんが、衛宮君はいますぐ元の世界に戻ることは出来ないんじゃないかの?」
「……そうですね」
「そうなると衛宮君はこちらで生活していかねばならんということになるが、なにしろ異世界人じゃからの。戸籍やお金に困るじゃろ?」
言われて気付く。
元々こっちの世界の住人でない士郎に、当然戸籍などあるはずがない。
「じゃから、うちの学園で働かんかの? 幸いわしが学園長じゃし、細かいところのごまかしは効くからの」
学園長の申し出は士郎にとって渡りに船というものなのだが。
「申し出はとてもありがたいんですが、えっと、いいんですか? 自分でいうのもなんですが、怪しいですよ?」
「かまわんよ。衛宮君は信用できそうだしの」
心配をよそにそう言いきる学園長。その様子に士郎はしばらく考え込むが、ある考えに至りなるほど、と納得する。
「そう……ですか。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらってもいいですか?」
「もちろんじゃとも。こちらとしても助かるでの。では衛宮君、キミの特技や趣味も含めて自己紹介してくれんかの」
士郎はわかりました、と頷く。
「名前は衛宮士郎、歳は23です。特技は…弓と料理と、英国に何年かいたので英語はできます。趣味は物の修理、というかガラクタいじりです」
士郎の言葉に学園長はふむ、と頷いた後。
「では衛宮君には副担任をやってもらおうかの。さしあたってのクラスは2-Aでよいじゃろ」
なんてことをさらっと言ってのけた。
「「「……は?」」」
再びフリーズする3人と、
「ジジィ、一体何を考えている?」
睨むように見据えるエヴァンジェリンにかまわず、学園長は話を進める。
「衛宮君、明後日から新しくネギ・スプリングフィールド君という子がマギステル・マギになるための修行として、この学園で先生をやるために来るんじゃがの」
ネギ・スプリングフィールドという名前にピクリ、と反応するエヴァンジェリン。
一方士郎は聞きなれない単語に首を捻る。
「マギステル・マギ?」
「立派な魔法使い、という意味じゃよ。それでそのネギ君なんじゃが、まだ数えで10歳なんじゃよ」
「……はい?」
想像の範囲のことを次々と聞かされ、士郎はただただ驚くばかり。
「もちろん大学卒業クラスの語学力はもっておって、授業にはなんの不安もないんじゃがの。いくら授業が出来ても10歳の先生では色々と不安じゃろう? 先生にとっても生徒にとっても」
魔法の修行といっても魔法は隠匿せねばならんしの、と付け加える学園長に、10歳の先生というところに驚きつつ、士郎はそうですね、と相槌を打つ。
「そこでじゃ、ネギ君には2-Aの担任をやってもらうつもりなんじゃが、その補佐役として衛宮君には副担任をやってもらいたいんじゃ。幸い衛宮君は英語が出来るようじゃしの」
「あの、俺教員免許なんて持ってないんですけど……」
「大丈夫じゃよ。教えるのはネギ君も十分出来るじゃろうし、衛宮君にお願いするのは授業以外の場面も含まれておるからの」
「……なるほど。わかりました。そういうことなら、教師をやらせていただきます」
「そうかそうか、こっちとしてもありがたいのう。では、よろしくのう、衛宮君」
「はい、これからよろしくお願いします。近衛さ─学園長」
士郎が頭を下げて学園長と言うと、学園長はフォフォフォと笑いだす。
「ちなみに衛宮君、刹那君とエヴァンジュリンは2-Aの生徒だよ。ついでに僕は現2-Aの担任だから、何か困ったことがあったら聞いてくれ」
「え、そうなんだ?」
タカミチの言葉に士郎が刹那のほうに視線を向ける。
「あ、はい、そうです」
「そっか。頼りない副担任だけど、これからよろしくな」
「はい、士郎さ─衛宮先生」
先生と言う刹那に士郎は苦笑する。
「先生なんてつけなくていいよ。柄じゃないし」
それに刹那は表情も和らげる。
「では、士郎さん、で。これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくな」
次に士郎はエヴァンジェリンのほうに向き直る。
「エヴァンジェリンちゃんもよろしく」
「ちゃん付けするな、衛宮士郎。私はお前より年上だ」
ふん、と不機嫌そうに言い捨てる。
しかしどうみても10歳くらいの女の子にしか見えないその姿に困惑していると、それを察した学園長が助け舟を出す。
「エヴァンジュリンは呪いによって魔力を封じられているが、本来は真祖の吸血鬼なんじゃよ」
「……真祖?……マジで?」
「そうだ、真祖の吸血鬼にして最強の魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。それが私だ」
不敵に微笑むエヴァンジェリン。
だが、彼女のフルネームを聞いた士郎は疑問を口にする。
「マクダウェル? ブリュンスタッドじゃなくて?」
「ブリュンスタッド? なんだそれは」
「……エヴァンジェリンちゃん、悪いんだけどこっちの真祖について説明してくれないかな?」
本当に平行世界に来たんだな、と改めて実感する士郎。
同時に、こっちの吸血鬼と向こうの吸血鬼は違うかもしれない、という考えに至った。
「ちゃん付けするな!私はお前より年上だといったはずだぞ。…まあいい。真祖というのは血を吸われ たことで吸血鬼になった者ではなく、失われた秘伝によって自らを吸血鬼化した者のことだ」
「なるほど。それならもう一つ。血を吸わないと生きていけない?」
「別に吸わなくても生きていける」
「それじゃ最後に。……エヴァンジェリンちゃんが血を吸ったとしたら、その人間はどうなる?」
士郎の真剣な表情に何かを感じたのか、エヴァンジュリンは文句も言うこともなく質問に答える。
「魔力が封印されているんだ、別にどうにもならん。貧血くらいにはなるかもしれんがな」
エヴァンジェリンの答えを聞き、士郎は強張らせていた表情を緩める。
「そっか。ありがとな、エヴァンジェリンちゃん」
「ちゃん付けするなと言っているだろうが、衛宮士郎!」
その言葉に何か思いついたようで、若干皮肉気に口元を吊り上げる。
「それなら衛宮士郎はやめてもらえないかな。 その呼ばれ方は好きじゃないんだ、エヴァンジェリンち ゃん?」
「……ふん、なら士郎でいいな」
「ああ、それでいいよ、えっと、「エヴァでいい」エヴァ。これからよろしくな」
士郎はグリグリと頭を撫でる。
「───っ!頭を撫でるな!子ども扱いするな!」
エヴァは顔を赤くして、頭に置かれた手を振り払う。
その反応に、士郎の中にからかいの心が頭をもたげる。
──いまなら士郎にも遠坂の気持ちが理解できるかもしれない。
「ゴメンゴメンエヴァちゃん」
「だから子ども扱いするなと言っているだろうが!」
ガァーっと怒鳴るエヴァを見て士郎は微笑む。
その一連のやりとりを刹那は呆然と眺め、タカミチは口元に笑みを湛えながら口を開く。
「エヴァンジェリン、楽しそうだね」
「貴様の目はどこについている!」
「これなら衛宮君にクラスを任せても大丈夫そうだね」
「そんなことないよ。これからよろしく」
「無視するな! ええい、貴様ら引き裂くぞ!」
「話の途中ですまんのじゃがのう、衛宮君」
「あ、はい。なんでしょう?」
エヴァの矛先はタカミチに向かったようで、士郎は背後を気にすることもなく学園長のほうへと向き直る。
「明日もう一度ここに来てもらえるかの? 書類のほうは作っておくが、一応目を通してもらわんといかんからの」
「わかりました」
「では、今日はこれくらいでいいんじゃが、さて、衛宮君の泊まるところはどうしたものかのう」
「あ、別に野宿でいいですよ」
「いやいや、そういう訳にもいくまいて」
考え込む学園長だが、エヴァを視界に捕らえると、一瞬ニヤリと笑う。
「……そうじゃの、今日はエヴァンジェリンのところに泊まってもらおうかの」
「……なんでさ?」
思わず口癖が出る士郎。
「エヴァンジェリンのところのほうが連絡もついて便利じゃと思うんじゃがの」
なにか問題でもあるかの? という学園長の態度に、士郎は慌ててまくし立てる。
「い、いや、でもさっきあったばっかの女の子のところになんて泊まれませんし、それにエヴァだって嫌だろう──」
「私はかまわんぞ」
最後まで言い切れず、士郎はギギギ、と音がせんばかりの動きで顔を動かす。
その先では、さきほどまでの騒ぎはどこにいったのか、エヴァが嗜虐的な笑顔を浮かべていた。
「貴様の世界の話も聞きたいと思っていたところだ。私の家でじっっくり話を聞かせておう」
どうやらエヴァは士郎の反応を見て、さっきまでの意趣返しをするつもりらしい。
「うむ、では衛宮君はエヴァンジェリンの家に泊まってくれ。書類の準備が出来たら電話するでの」
加えてフォフォフォと笑いながら畳み掛ける学園長に、士郎はもう何を言っても無駄なことを悟り、
「……わかりました。今日はエヴァのところにお世話になります」
ガックリと肩を落としながら了解を伝えた。
「明日までに衛宮君の住むところも手配しておくでの」
「……よろしくお願いします」
肩を落としたままの士郎は、学園長の悪戯っぽい笑顔に気付くことはなかった。
「うむ。それでは刹那君もエヴァンジェリンも今日はご苦労じゃった」
「では行くぞ、士郎」
「……失礼しました」
「失礼しました」
エヴァに続いて士郎、最後に刹那が学園長室を後にした。
士郎たちが出て行った後の学園長室では、学園長とタカミチが話を交わしていた。
「──よかったんですか? 学園長」
「なにがじゃ? タカミチ君」
「衛宮君を2-Aの副担任にしてしまって」
「衛宮君だからこそ、じゃよ」
「つまりは監視、ですか」
タカミチは僅かに呆れた顔をする。
監視しなければいけないような人物を教師に、加えてクラスの副担任にしようというのだ。
タカミチの反応も当然と言える。
「うむ、最初はそのつもりじゃった。しかし、それも必要ないかもしれんのう」
「ええ、僕もそう思いますね。短い時間ですが、彼は信頼できると思いますよ」
「そうじゃのう。まあ、とりあえずしばらくは様子を見させてもらうとしようかの」
それに、と呟く。
「彼が2-Aの副担任としてどうやっていくか楽しみでもあるしのう」
フォフォフォという学園長の笑い声が部屋に響いた。
半信半疑といった感じの学園長。
「俺も確かなことは言えませんが、おそらくは」
「そんなことが可能なんですか?」
学園長と同じ心境らしく、戸惑ったような声の刹那に、士郎も同じように困ったような声で答える。
「いや、不可能なはずなんだけど、実際こっちとあっちは違うしなあ……」
「違うって具体的にどういうところが違うんだい?」
士郎が自身に言い聞かせるように言っていると、タカミチが興味深そうに訊ねる。
「とりあえずは魔法使い、かな。俺のいた世界では魔法使いは4人しかいないけど、魔術師が存在するんだ」
「どういうことだい?」
「いままで聞いた範囲では、こっちの世界だと魔術と魔法は同じものらしいけど、向こうは全くの別物なんだ。俺の世界の魔法っていうのは、どれだけ時間やお金、その時代の科学を費やしても達成不可能な奇跡のことで、それ以外はすべて魔術なんだ。だから、俺の世界では魔法使いは4人しかいないし、魔法使いと魔術師も全く別物なんだ」
「なるほどね」
「衛宮君。君が別世界から飛ばされたと証明できるものはあるかの?」
士郎の説明にタカミチが納得していると、それを黙って聞いていた学園長が口を開いた。
「証明できるもの、ですか」
士郎は自身の身なりを確認するが、証明できそうなものは見当たらない。
しいていえば聖骸布であるが、これで証明出来るとも思えない。
「……そうですね、証明になるかどうかはわかりませんが、魔術くらいなら」
「ふむ。では見せてもらってもいいかのう?」
「あ、その前に一つお願いがあるんですが」
「なにかの?」
「俺の魔術はかなり異端なので、俺の魔術のことは秘密にしてもらえますか?」
「あいわかった。3人もいいかの?」
近衛さんの言葉に頷く刹那とタカミチに、まあいいだろう、と言わんばかりに鷹揚に頷くエヴァンジェリン。
「それじゃ…、投影 開始」
創り出すは、陰陽の夫婦剣である干将莫耶。
どうぞ、と干将莫耶を差し出すが、学園長はそれを見て首を捻る。
「はて、衛宮君。魔法、いや魔術じゃったか。いつ使ったのかの? わしにはアーティファクトを取り出したようにしか見えんのじゃが」
「いえ、それが俺の魔術です。投影と言って、本物のレプリカを魔力で創る魔術で、その剣も俺の魔力 で創り上げたものです」
「な、なんじゃと!?」
目を見開く学園長に加えて。
「貴様、これを魔力で創ったと言うのか!? そんなことできるわけないだろう!?」
いままで静観していたエヴァンジェリンまでもが飛び掛らんばかりの勢いで詰め寄る。
その様子に、さきほどまで士郎の中にあった物静かなイメージが崩れ去っていくのを感じつつ、宥める。
「……まあ、落ち着こう、な?」
士郎の言葉に、自分がどういう状況なのか把握したのかエヴァンジェリンはふん、と不満げに鼻をならした後。
「貴様、いまのをもう一度やってみろ」
上からの言葉に、まだ知り合ってから短いながらもなんとなくらしいな、と感じ微笑むが、それがエヴァンジェリンには御気に召さなかったようで、むすっとした表情で催促する。
「笑ってないでさっさとやってみろ!」
「ああ、わかった。──投影 開始」
「………」
微笑みを収め、再び干将莫耶を投影し手渡すと、エヴァンジュリンはそれを穴があくほど観察する。
しばらく部屋に沈黙が下りるが、それは学園長によって打ち破られた。
「なるほどのう、確かに衛宮君は異世界から来たようじゃの」
「えっと、信じてもらえるんですか?」
信じてもらえるとは思っていなかったのだろう。
目を丸くして驚く士郎に、学園長は干将莫耶を指す。
「これを見せてもらっては、そう考えたほうが辻褄が合うからの。ところで衛宮君」
ほう、と息をつく間もなく学園長は質問を続ける。
「はい、なんですか?」
「物は相談なんじゃが、この学園で働く気はないかの?」
「「「「は?」」」」
4人がハモる。
その中で1人で悠然と笑う学園長に士郎は訊ねる。
「えーっと、近衛さん、どういうことですか?」
「詳しいことはわからんが、衛宮君はいますぐ元の世界に戻ることは出来ないんじゃないかの?」
「……そうですね」
「そうなると衛宮君はこちらで生活していかねばならんということになるが、なにしろ異世界人じゃからの。戸籍やお金に困るじゃろ?」
言われて気付く。
元々こっちの世界の住人でない士郎に、当然戸籍などあるはずがない。
「じゃから、うちの学園で働かんかの? 幸いわしが学園長じゃし、細かいところのごまかしは効くからの」
学園長の申し出は士郎にとって渡りに船というものなのだが。
「申し出はとてもありがたいんですが、えっと、いいんですか? 自分でいうのもなんですが、怪しいですよ?」
「かまわんよ。衛宮君は信用できそうだしの」
心配をよそにそう言いきる学園長。その様子に士郎はしばらく考え込むが、ある考えに至りなるほど、と納得する。
「そう……ですか。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらってもいいですか?」
「もちろんじゃとも。こちらとしても助かるでの。では衛宮君、キミの特技や趣味も含めて自己紹介してくれんかの」
士郎はわかりました、と頷く。
「名前は衛宮士郎、歳は23です。特技は…弓と料理と、英国に何年かいたので英語はできます。趣味は物の修理、というかガラクタいじりです」
士郎の言葉に学園長はふむ、と頷いた後。
「では衛宮君には副担任をやってもらおうかの。さしあたってのクラスは2-Aでよいじゃろ」
なんてことをさらっと言ってのけた。
「「「……は?」」」
再びフリーズする3人と、
「ジジィ、一体何を考えている?」
睨むように見据えるエヴァンジェリンにかまわず、学園長は話を進める。
「衛宮君、明後日から新しくネギ・スプリングフィールド君という子がマギステル・マギになるための修行として、この学園で先生をやるために来るんじゃがの」
ネギ・スプリングフィールドという名前にピクリ、と反応するエヴァンジェリン。
一方士郎は聞きなれない単語に首を捻る。
「マギステル・マギ?」
「立派な魔法使い、という意味じゃよ。それでそのネギ君なんじゃが、まだ数えで10歳なんじゃよ」
「……はい?」
想像の範囲のことを次々と聞かされ、士郎はただただ驚くばかり。
「もちろん大学卒業クラスの語学力はもっておって、授業にはなんの不安もないんじゃがの。いくら授業が出来ても10歳の先生では色々と不安じゃろう? 先生にとっても生徒にとっても」
魔法の修行といっても魔法は隠匿せねばならんしの、と付け加える学園長に、10歳の先生というところに驚きつつ、士郎はそうですね、と相槌を打つ。
「そこでじゃ、ネギ君には2-Aの担任をやってもらうつもりなんじゃが、その補佐役として衛宮君には副担任をやってもらいたいんじゃ。幸い衛宮君は英語が出来るようじゃしの」
「あの、俺教員免許なんて持ってないんですけど……」
「大丈夫じゃよ。教えるのはネギ君も十分出来るじゃろうし、衛宮君にお願いするのは授業以外の場面も含まれておるからの」
「……なるほど。わかりました。そういうことなら、教師をやらせていただきます」
「そうかそうか、こっちとしてもありがたいのう。では、よろしくのう、衛宮君」
「はい、これからよろしくお願いします。近衛さ─学園長」
士郎が頭を下げて学園長と言うと、学園長はフォフォフォと笑いだす。
「ちなみに衛宮君、刹那君とエヴァンジュリンは2-Aの生徒だよ。ついでに僕は現2-Aの担任だから、何か困ったことがあったら聞いてくれ」
「え、そうなんだ?」
タカミチの言葉に士郎が刹那のほうに視線を向ける。
「あ、はい、そうです」
「そっか。頼りない副担任だけど、これからよろしくな」
「はい、士郎さ─衛宮先生」
先生と言う刹那に士郎は苦笑する。
「先生なんてつけなくていいよ。柄じゃないし」
それに刹那は表情も和らげる。
「では、士郎さん、で。これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくな」
次に士郎はエヴァンジェリンのほうに向き直る。
「エヴァンジェリンちゃんもよろしく」
「ちゃん付けするな、衛宮士郎。私はお前より年上だ」
ふん、と不機嫌そうに言い捨てる。
しかしどうみても10歳くらいの女の子にしか見えないその姿に困惑していると、それを察した学園長が助け舟を出す。
「エヴァンジュリンは呪いによって魔力を封じられているが、本来は真祖の吸血鬼なんじゃよ」
「……真祖?……マジで?」
「そうだ、真祖の吸血鬼にして最強の魔法使い、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。それが私だ」
不敵に微笑むエヴァンジェリン。
だが、彼女のフルネームを聞いた士郎は疑問を口にする。
「マクダウェル? ブリュンスタッドじゃなくて?」
「ブリュンスタッド? なんだそれは」
「……エヴァンジェリンちゃん、悪いんだけどこっちの真祖について説明してくれないかな?」
本当に平行世界に来たんだな、と改めて実感する士郎。
同時に、こっちの吸血鬼と向こうの吸血鬼は違うかもしれない、という考えに至った。
「ちゃん付けするな!私はお前より年上だといったはずだぞ。…まあいい。真祖というのは血を吸われ たことで吸血鬼になった者ではなく、失われた秘伝によって自らを吸血鬼化した者のことだ」
「なるほど。それならもう一つ。血を吸わないと生きていけない?」
「別に吸わなくても生きていける」
「それじゃ最後に。……エヴァンジェリンちゃんが血を吸ったとしたら、その人間はどうなる?」
士郎の真剣な表情に何かを感じたのか、エヴァンジュリンは文句も言うこともなく質問に答える。
「魔力が封印されているんだ、別にどうにもならん。貧血くらいにはなるかもしれんがな」
エヴァンジェリンの答えを聞き、士郎は強張らせていた表情を緩める。
「そっか。ありがとな、エヴァンジェリンちゃん」
「ちゃん付けするなと言っているだろうが、衛宮士郎!」
その言葉に何か思いついたようで、若干皮肉気に口元を吊り上げる。
「それなら衛宮士郎はやめてもらえないかな。 その呼ばれ方は好きじゃないんだ、エヴァンジェリンち ゃん?」
「……ふん、なら士郎でいいな」
「ああ、それでいいよ、えっと、「エヴァでいい」エヴァ。これからよろしくな」
士郎はグリグリと頭を撫でる。
「───っ!頭を撫でるな!子ども扱いするな!」
エヴァは顔を赤くして、頭に置かれた手を振り払う。
その反応に、士郎の中にからかいの心が頭をもたげる。
──いまなら士郎にも遠坂の気持ちが理解できるかもしれない。
「ゴメンゴメンエヴァちゃん」
「だから子ども扱いするなと言っているだろうが!」
ガァーっと怒鳴るエヴァを見て士郎は微笑む。
その一連のやりとりを刹那は呆然と眺め、タカミチは口元に笑みを湛えながら口を開く。
「エヴァンジェリン、楽しそうだね」
「貴様の目はどこについている!」
「これなら衛宮君にクラスを任せても大丈夫そうだね」
「そんなことないよ。これからよろしく」
「無視するな! ええい、貴様ら引き裂くぞ!」
「話の途中ですまんのじゃがのう、衛宮君」
「あ、はい。なんでしょう?」
エヴァの矛先はタカミチに向かったようで、士郎は背後を気にすることもなく学園長のほうへと向き直る。
「明日もう一度ここに来てもらえるかの? 書類のほうは作っておくが、一応目を通してもらわんといかんからの」
「わかりました」
「では、今日はこれくらいでいいんじゃが、さて、衛宮君の泊まるところはどうしたものかのう」
「あ、別に野宿でいいですよ」
「いやいや、そういう訳にもいくまいて」
考え込む学園長だが、エヴァを視界に捕らえると、一瞬ニヤリと笑う。
「……そうじゃの、今日はエヴァンジェリンのところに泊まってもらおうかの」
「……なんでさ?」
思わず口癖が出る士郎。
「エヴァンジェリンのところのほうが連絡もついて便利じゃと思うんじゃがの」
なにか問題でもあるかの? という学園長の態度に、士郎は慌ててまくし立てる。
「い、いや、でもさっきあったばっかの女の子のところになんて泊まれませんし、それにエヴァだって嫌だろう──」
「私はかまわんぞ」
最後まで言い切れず、士郎はギギギ、と音がせんばかりの動きで顔を動かす。
その先では、さきほどまでの騒ぎはどこにいったのか、エヴァが嗜虐的な笑顔を浮かべていた。
「貴様の世界の話も聞きたいと思っていたところだ。私の家でじっっくり話を聞かせておう」
どうやらエヴァは士郎の反応を見て、さっきまでの意趣返しをするつもりらしい。
「うむ、では衛宮君はエヴァンジェリンの家に泊まってくれ。書類の準備が出来たら電話するでの」
加えてフォフォフォと笑いながら畳み掛ける学園長に、士郎はもう何を言っても無駄なことを悟り、
「……わかりました。今日はエヴァのところにお世話になります」
ガックリと肩を落としながら了解を伝えた。
「明日までに衛宮君の住むところも手配しておくでの」
「……よろしくお願いします」
肩を落としたままの士郎は、学園長の悪戯っぽい笑顔に気付くことはなかった。
「うむ。それでは刹那君もエヴァンジェリンも今日はご苦労じゃった」
「では行くぞ、士郎」
「……失礼しました」
「失礼しました」
エヴァに続いて士郎、最後に刹那が学園長室を後にした。
士郎たちが出て行った後の学園長室では、学園長とタカミチが話を交わしていた。
「──よかったんですか? 学園長」
「なにがじゃ? タカミチ君」
「衛宮君を2-Aの副担任にしてしまって」
「衛宮君だからこそ、じゃよ」
「つまりは監視、ですか」
タカミチは僅かに呆れた顔をする。
監視しなければいけないような人物を教師に、加えてクラスの副担任にしようというのだ。
タカミチの反応も当然と言える。
「うむ、最初はそのつもりじゃった。しかし、それも必要ないかもしれんのう」
「ええ、僕もそう思いますね。短い時間ですが、彼は信頼できると思いますよ」
「そうじゃのう。まあ、とりあえずしばらくは様子を見させてもらうとしようかの」
それに、と呟く。
「彼が2-Aの副担任としてどうやっていくか楽しみでもあるしのう」
フォフォフォという学園長の笑い声が部屋に響いた。
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Comment
第三話読みました。
文章は、特に問題なく読みやすいです。
話の展開的には、定番の副担任就任型。前例がたくさんあるので、影が薄くならない事を願います。
何か否定的なコメントに(主観的に)見えてきてしまいましたが、更新楽しみに待ってます。
話の展開的には、定番の副担任就任型。前例がたくさんあるので、影が薄くならない事を願います。
何か否定的なコメントに(主観的に)見えてきてしまいましたが、更新楽しみに待ってます。
感想
Fateとネギまのクロスですか、最近では更新停止したりする作品が多いので頑張って欲しいです。
学園長と接触2-A副担任に~ 士郎の魔術でエヴァや学園長がかなり驚く~ とお約束な展開ですので、これからは他のFate×ネギま作品との差別化があれば良いかもしれません。
今後の展開に期待します、でわでわ~。
学園長と接触2-A副担任に~ 士郎の魔術でエヴァや学園長がかなり驚く~ とお約束な展開ですので、これからは他のFate×ネギま作品との差別化があれば良いかもしれません。
今後の展開に期待します、でわでわ~。
無題
とてもおもしろかったです。
しかしながら異世界→副担任モノは前例が多く存在している昨今では、オリジナリティに欠けるのでは?と思いました。
ですがそれ以外は良作だと思います。
では続きを楽しみにしております!
しかしながら異世界→副担任モノは前例が多く存在している昨今では、オリジナリティに欠けるのでは?と思いました。
ですがそれ以外は良作だと思います。
では続きを楽しみにしております!
魔法使い
面白かったです
毎回楽しみにしていますので、頑張ってほしいですね
次回をお待ちしています
>魔法使い
確かに魔法の種類は五種類で魔法使いは五人いるのでしょうが、現存するのは四人で間違いないはずです
確かうち一人は死んでいるとも生きているともいえない状態で、一般的には四人と数えると聞いたことがあります
毎回楽しみにしていますので、頑張ってほしいですね
次回をお待ちしています
>魔法使い
確かに魔法の種類は五種類で魔法使いは五人いるのでしょうが、現存するのは四人で間違いないはずです
確かうち一人は死んでいるとも生きているともいえない状態で、一般的には四人と数えると聞いたことがあります
誤表記?
話が読みやすく面白かったです。
次回をお待ちしています
>語表記?
「いままで聞いた範囲では、こっちの世界だと魔術と魔法は同じものらしいけど、向こうは全くの別物なんだ。こっちの世界の魔法っていうのは、どれだけ時間やお金、その時代の科学を費やしても達成不可能な奇跡のことで、それ以外はすべて魔術なんだ。だから、俺の世界では魔法使いは4人しかいないし、魔法使いと魔術師も全く別物なんだ」
の部分で「こっちの世界の魔法っていうのは、どれだけ時間やお金」と表記されていますが「こっちの世界」ではなく「俺のいた世界」じゃないかなぁ~っと思いました。
次回をお待ちしています
>語表記?
「いままで聞いた範囲では、こっちの世界だと魔術と魔法は同じものらしいけど、向こうは全くの別物なんだ。こっちの世界の魔法っていうのは、どれだけ時間やお金、その時代の科学を費やしても達成不可能な奇跡のことで、それ以外はすべて魔術なんだ。だから、俺の世界では魔法使いは4人しかいないし、魔法使いと魔術師も全く別物なんだ」
の部分で「こっちの世界の魔法っていうのは、どれだけ時間やお金」と表記されていますが「こっちの世界」ではなく「俺のいた世界」じゃないかなぁ~っと思いました。
無題
定番の副担任に納まりましたか士郎。
数多くのFateとネギまのクロスがあって大体の職業は出てますからね。無理にここでオリジナリティを出さないでも大丈夫でしょう。(そこ等辺は今後の内容で期待しております)
ただこうゆう風に魔法と魔術の違いについて説明されたら普通どんなのが魔法に当たるのか気になるかと思うんですが・・・。
まぁ、そんな説明入れたら長くなってしょうがねぇだろ!!って事であえて入れてなかったとしたら申し訳ありません。
魔法については私も魔法の種類は五種類だけど現存する魔法「使い」は4人だったと認識しておりますがどうなんでしょう?
それでは、次回も楽しみにしております。
数多くのFateとネギまのクロスがあって大体の職業は出てますからね。無理にここでオリジナリティを出さないでも大丈夫でしょう。(そこ等辺は今後の内容で期待しております)
ただこうゆう風に魔法と魔術の違いについて説明されたら普通どんなのが魔法に当たるのか気になるかと思うんですが・・・。
まぁ、そんな説明入れたら長くなってしょうがねぇだろ!!って事であえて入れてなかったとしたら申し訳ありません。
魔法については私も魔法の種類は五種類だけど現存する魔法「使い」は4人だったと認識しておりますがどうなんでしょう?
それでは、次回も楽しみにしております。
無題
第一魔法の使い手は既に亡くなっています。
ついでに言うと宝石爺とブルー以外の魔法使いは行方不明だそうです。
そしてブルー以外の魔法使いは生き物をやめちゃってるそうです。
小説おもしれぇ!楽しみが一つふえた。
ついでに言うと宝石爺とブルー以外の魔法使いは行方不明だそうです。
そしてブルー以外の魔法使いは生き物をやめちゃってるそうです。
小説おもしれぇ!楽しみが一つふえた。
無題
とても面白いと私は思います。
ただこの士郎がどのエンドを通ったのかがきになりますね。
サーヴァント現界ということは=セイバー現界でUBWグッドなのだろうか?
いや、でも大聖杯破壊はHFのみだし……
もしやホロウルートでしょうか?
と、アホな独り言はここまでで。続きを楽しみにしています。
ただこの士郎がどのエンドを通ったのかがきになりますね。
サーヴァント現界ということは=セイバー現界でUBWグッドなのだろうか?
いや、でも大聖杯破壊はHFのみだし……
もしやホロウルートでしょうか?
と、アホな独り言はここまでで。続きを楽しみにしています。
無題
うほwコメント返信みて驚きましたわw
独自ルートですか。確かにそのほうが話を構成しやすく良い判断だと思います。
ただそうなるとFate陣の誰とカップリングしているのかきになったりw
そこら辺が後に話の中で触れられるのを楽しみに待ってます^^
独自ルートですか。確かにそのほうが話を構成しやすく良い判断だと思います。
ただそうなるとFate陣の誰とカップリングしているのかきになったりw
そこら辺が後に話の中で触れられるのを楽しみに待ってます^^
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