ネギまとFateのクロスオーバー小説を書いていこうと思ってます。
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ロンドンのとある一室。
いまここで、1人の男性と2人の女性が第二魔法の一端に迫ろうとしていた。
歳の頃は20代前半であろうか。
赤い聖骸布を着た男は衛宮士郎。
同じく赤を纏うは遠坂凛、そして金色と表現すべき女性はルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトといった。
実験は順調だった。
彼女たちは時計塔でも一、二を争う天才魔術師。
その2人が協力しているのだから、実験は順調なはずだった。
──そう、はずだったのだ。
しかし。
「あの……遠坂さん? ルヴィアさん?」
「「……使う宝石を間違ったわ(間違えましたわ)」」
「…………」
三人の頬に冷や汗が伝う。
彼らは忘れていたのだ。
それは、彼女たちが致命的なスキル、すなわちうっかりスキルを保有していることを。
話はさかのぼる。
それは士郎が渡英を間近に控えた冬のことであった。
いつも通りの生活を送っていたところにふらりと訪れたのだ。
第二魔法の使い手、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが。
なんでも、大聖杯をぶっ壊し、なおかつ英霊を現界させている士郎たちを見に来たとのこと。
しかし。
「ふむ、面白そうな坊主だな。よし、わしの弟子になれ!」
宝石翁は、士郎を見るとまるでいい玩具を見つけた、と言わんばかりの表情でそう言い放った。
その瞬間から、士郎はこのゼルレッチのじいさんの弟子になることとなった。
とはいえ、基本的な生活が変わったわけではない。
日本にいる間では衛宮家で、渡英してからは赤いあくまと一緒に生活したり、金色のあくまの家で執事のバイトなどをしていた。
ただ、たまに旅行から帰ってきた大師父の気まぐれのような修行に付き合わされることとなった。
そんなこんなで老師に出会ってから4年が経ったある日、ふらりとやってきた大師父が最終試験なることを言い出した。
その内容は、
「この宝石剣を投影してみろ」
というものだった。
相変わらず無茶な爺さんである。
とはいえ、詳しいことは省くが、最終試験のための修行の結果、宝石剣の投影ができることとなる。
その代償として、いままでの修行で薄赤色に変化していた髪の毛が白くなることとなったが。
しかし肌は黒くなることはなく、士郎はアイツと同じにならずに済んだ、と安堵したものだ。
閑話休題。
試験終了の翌日。
宝石剣が投影できたことを知った遠坂とルヴィアが、あくまの笑顔でこう迫ってきた。
「「士郎(シェロ)? 手伝ってもらうわよ(もらいますわよ)?」」
士郎はただ頷くことしかできなかった。
彼女たちがまず目指したのは、平行世界への道を作ること。
もちろん、それはほんの小さな、それこそ小指の先ほどの大きさのものにすぎないが。
そのために彼女たちは士郎の投影した第二魔法の一端である宝石剣を元に、研究を進めていった。
そして士郎が協力を強制させられてから1年後。
すべての準備が整い、ついに実験が始まることとなった。
そして話は戻る。
「ど、ど、ど、どうするんだよこれ!?」
いくら宝石剣を投影できるとはいえ、元々魔術の才能は零に近い士郎にとって魔法一歩手前の実験の暴走を食い止める術はない。
「慌てないで! 確かに使う宝石は間違ったけど、このままでもつながりそうだわ!」
「確かにそうですわね。このまま実験を続けましょう」
魔術使いである士郎とは違い、生まれついての魔術師である彼女たちにとって、魔法の一端に手が届きそうなところで実験をやめることなどできるはずがなかった。
それに、ここまで進んでしまっては途中で止めたほうがかえって危険かもしれない。士郎はそう考え、見守ることにした。
遠坂とルヴィアは実験を進めていく。
それぞれの宝石がそれぞれの色を放ち、部屋は七色の光に包まれる。
そして──。
「「つながったわ(つながりましたわ)!!」」
平行世界への道がつながったようで、遠坂とルヴィアは大喜びしている。
士郎も安堵のため息をつく。
───と。
宝石がいままで以上の光を放ち始める。
「「へっ?」」
「危ないっ!」
考える間もなく遠坂とルヴィアを突き飛ばす。
その瞬間、士郎は光に包まれ──。
意識が落ちた。
そんなことを、刹那の後ろを歩きながら思い出していた。
(それにしても、魔法使い、ね……)
心の中で呟く。
いきなり魔法使いですか? と聞かれた時は驚かされることとなったが、その後の刹那の言葉には驚かされたというより困惑させられた。
刹那の中では、魔法と魔術は一緒のもののようだ。
(これは、本当に平行世界かもな……)
大師父の地獄の修行で大抵のものには驚かなくなった士郎だが、今回ばかりはそうもいかない。
(ここが本当に平行世界だったら、俺は第二魔法の体現者か?)
それが遠坂とルヴィアにばれた時を想像して、思わず背筋に冷たいものが走るのを感じていると、前を歩く刹那が声をかけていた。
「士郎さん、そろそろ学園です」
顔を上げると目の前には大きな橋があり、その先には大きな西洋風の建物が見える。
「……大きな学園なんだな」
「そうですね。麻帆良学園には初等部から大学まであり、日本でも有数の大きさだと聞いています」
「へぇ、そうなのか」
相槌を打ちつつ橋を渡っていると、一瞬違和感を覚え立ち止まる。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
結界か何かだろうと判断し、再び足を進める。
そういえば学園長が魔法使いだといっていたし、結界の一つや二つあってもおかしくないな、と納得する。
あれ、でもそうするともしかして俺って侵入者? などと考えながらしばらく歩いくと、
「ほう。侵入者の他に誰かいると思ったら桜咲刹那、お前だったか」
正面に小さな人影が悠然たる態度で立っていた。
「……子供?」
「……エヴァンジェリンさんですか」
「知り合いなのか?」
「……クラスメイトです」
「クラスメイト……」
この2人がいるクラスか、と一瞬だけ場違いな想像をする。
そんなことを目の前の男が考えているとは知るはずもなく、エヴァンジェリンは士郎に視線を送る。
「そいつは何者だ? 魔力を感じるところから魔法使いのようだが」
「こちらは……」
言葉を詰まらせる刹那に代わり、士郎が口を開く。
「あー、一応言わせてもらうと俺は魔法使いじゃなくて魔術使いなんだが」
「どっちも同じだろうが。下らんことを言うな」
「……マジかよ」
にべも無いエヴァンジェリンの言葉に、士郎は大きく肩を落とす。
「? まあいい、誰であろうとかまわん。めんどくさいがこれも仕事だからな。刹那、そこをどけ」
「…………」
しかし、刹那は士郎の前から動かない。
同時に、肩を落としていた士郎が真顔に戻る。
「ほう? 貴様が、侵入者を庇うか」
「……さきほど士郎さんには助けていただきましたから」
「そんなことは私の知ったことではない。もう一度言う。そこをどけ」
「…………」
2人の間に険悪な空気が流れる。
それを打ち消すように士郎が刹那の肩に手を置き、口を開く。
「刹那、少し下がっていてくれないかな?」
「ですが……」
心配げな表情の刹那に士郎は笑顔を向ける。
「ちょっと話をするだけだから、心配しなくていいよ」
「……わかりました」
士郎とエヴァンジェリンの顔を交互に見た後、刹那が士郎の後ろに下がる。
それを確認してから、士郎は敵意の無いことを表すために両手をあげる。
「とりあえず、この糸みたいなものをしまってくれないかな? 刹那を巻き込みたくないし、君みたいな女の子とも争いたくない」
「……貴様、何者だ?」
「俺は衛宮士郎。ただの魔術使いだよ」
「そのただの魔術使いがここに何の用だ?」
「ここに来たのは森の中で迷ってたところを刹那がたまたま通りかかって、丁度聞きたいこともあるから学園長のところまで案内してもらっているだけで、別になにかしようって訳じゃない。なんなら調べてくれてもいい」
エヴァンジェリンは両手をあげている士郎を頭から爪先まで観察した後、おもむろに口を開く。
「学園長のじじいのところに行くと言ったな?」
士郎はああ、と頷く。
「……いいだろう。敵意はないようだし、今の状態で貴様の相手をするのは少々面倒そうだ。話はじじいのところで聞いてやる。ついてこい」
それだけ言うと、さっさと建物の方へ歩き出す。
場の緊張感が無くなりほう、と息をはき両手を下ろすのと、刹那が声をかけるのはほぼ同時だった。
「士郎さん、大丈夫ですか!?」
「ああ、なんにもされてないよ」
「そうですか」
安堵のため息をつく刹那に、士郎は申し訳なさそうな顔で言う。
「ごめんな」
「……どうして士郎さんが謝るんですか?」
「俺のせいで面倒ごとに巻き込まれたんだし、エヴァンジェリンちゃんだっけ? クラスメイトと気まずくさせちゃっただろ?」
だからごめんな、と。
当然だという風に士郎は刹那に謝る。
それを不思議そうに見ていた刹那だが、次の瞬間、くす、と微かに笑った。
「あー、刹那? どこか笑うところあったか?」
「いえ、なんでもありません。それより今は学園長のところに行きましょう。ついてきてください」
先を歩き出す刹那に、士郎は首を捻る。
しかし、その向こうでエヴァンジェリンが早く来い、という風な顔を確認し、士郎は急いで歩き出した。
校舎の中に入ってからしばらく歩くと、ある扉の前で刹那が立ち止まる。
「ここが学園長室です」
刹那の言うとおり、その扉の横には学園長室、という文字が書かれた札が掛かっていた。
「わざわざありがとな」
「いえ、気になさらないでください」
「いや、そういう訳にはいかないさ。身元不明で怪しい俺をここまで連れてきてくれただろ? だから、うん、やっぱりありがとう」
そういうと、刹那は表情を和らげる。
「わかりました。受け取っておきます」
「いいからさっさと入れ」
「あ、はい」
不機嫌そうなエヴァンジェリンに促され、刹那は目の前の扉をノックして入っていく。
士郎とエヴァンジェリンもその後に続く。
部屋の中に入ると、そこには椅子に座った老人と30代くらいの男が立っていた。
「おお、刹那君、エヴァンジェリンもご苦労じゃったな。それで、後ろの彼は誰かの?」
老人の質問に、刹那はさっきまでの出来事をおおまかに説明した。
「なるほどのう……。衛宮君、じゃったか。わしの名は近衛近右衛門、この学園の学園長じゃ。今回はうちの生徒を助けてくれてありがとの」
「僕は刹那君の担任の高畑・T・タカミチだ。僕からもお礼を言わせてもらうよ。ありがとう衛宮君」
「あ、いえ。元々俺の油断が原因でしたし、気にしないでください、近衛さん、タカミチさん」
「タカミチでいいよ、衛宮君」
……よかった、話しやすい人たちで、と内心安堵する。
それにしても、関東魔術協会、か。
「さて、衛宮君。どうやらワシに訊きたいことがあるようじゃが?」
「あ、はい。えっとですね……」
刹那とエヴァの言葉からここは平行世界だろうと9割方確信しているが、それでも士郎は祈るように訊ねる。
「……この学園に、魔法使いは何人いますか? いえ、魔法使いは5人以上いますか?」
士郎以外には全く意図が掴めない質問に、学園長とタカミチが顔を見合わせ、刹那とエヴァンジェリンも不思議そうな顔をする。
しかし、士郎の真剣な顔を見て、学園長は口を開く。
「ふむ。聞かれたことには答えんとの。それで答えじゃが、イエスじゃ。わしやタカミチ君にエヴァンジェリンも魔法使いだからのう」
士郎は思わず額に手をやる。
近衛さんが嘘を言っているようには見えず、かといって魔法使いと魔術師の違いも知らないほど素人のようにも見えなかったのだ。
そんな士郎に学園長は訝しげな表情を送る。
「ところで衛宮君、こちらからも質問してもいいかの?」
「あ、はい。もちろんです」
「では衛宮君。なぜ森の中を彷徨っていたのか、教えてもらえるかの?」
「ええと……」
士郎は困ったような顔を浮かべ、背後にいるエヴァンジェリンたちをチラリと見やるが、それを目敏く見つけたエヴァンジェリンがくっくっくと可笑しげに笑う。
「何だ? 私たちに聞かれては困るような話なのか?」
「いや、そういう訳……なのか?」
「なんだそれは……」
皮肉気な言葉だったのだが、その言葉に士郎はうーん、と考え込み、その予想外の反応にエヴァンジェリンも呆れたような声を出す。
「衛宮君、とりあえず言ってみてくれんかの? 話の内容は口外しないようにするでの」
「……わかりました」
覚悟を決める。
一つ、大きく息を吸う。
「俺、別の世界から飛ばされたみたいなんです」
「「「「…………は?」」」」
歳の頃は20代前半であろうか。
赤い聖骸布を着た男は衛宮士郎。
同じく赤を纏うは遠坂凛、そして金色と表現すべき女性はルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトといった。
実験は順調だった。
彼女たちは時計塔でも一、二を争う天才魔術師。
その2人が協力しているのだから、実験は順調なはずだった。
──そう、はずだったのだ。
しかし。
「あの……遠坂さん? ルヴィアさん?」
「「……使う宝石を間違ったわ(間違えましたわ)」」
「…………」
三人の頬に冷や汗が伝う。
彼らは忘れていたのだ。
それは、彼女たちが致命的なスキル、すなわちうっかりスキルを保有していることを。
話はさかのぼる。
それは士郎が渡英を間近に控えた冬のことであった。
いつも通りの生活を送っていたところにふらりと訪れたのだ。
第二魔法の使い手、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが。
なんでも、大聖杯をぶっ壊し、なおかつ英霊を現界させている士郎たちを見に来たとのこと。
しかし。
「ふむ、面白そうな坊主だな。よし、わしの弟子になれ!」
宝石翁は、士郎を見るとまるでいい玩具を見つけた、と言わんばかりの表情でそう言い放った。
その瞬間から、士郎はこのゼルレッチのじいさんの弟子になることとなった。
とはいえ、基本的な生活が変わったわけではない。
日本にいる間では衛宮家で、渡英してからは赤いあくまと一緒に生活したり、金色のあくまの家で執事のバイトなどをしていた。
ただ、たまに旅行から帰ってきた大師父の気まぐれのような修行に付き合わされることとなった。
そんなこんなで老師に出会ってから4年が経ったある日、ふらりとやってきた大師父が最終試験なることを言い出した。
その内容は、
「この宝石剣を投影してみろ」
というものだった。
相変わらず無茶な爺さんである。
とはいえ、詳しいことは省くが、最終試験のための修行の結果、宝石剣の投影ができることとなる。
その代償として、いままでの修行で薄赤色に変化していた髪の毛が白くなることとなったが。
しかし肌は黒くなることはなく、士郎はアイツと同じにならずに済んだ、と安堵したものだ。
閑話休題。
試験終了の翌日。
宝石剣が投影できたことを知った遠坂とルヴィアが、あくまの笑顔でこう迫ってきた。
「「士郎(シェロ)? 手伝ってもらうわよ(もらいますわよ)?」」
士郎はただ頷くことしかできなかった。
彼女たちがまず目指したのは、平行世界への道を作ること。
もちろん、それはほんの小さな、それこそ小指の先ほどの大きさのものにすぎないが。
そのために彼女たちは士郎の投影した第二魔法の一端である宝石剣を元に、研究を進めていった。
そして士郎が協力を強制させられてから1年後。
すべての準備が整い、ついに実験が始まることとなった。
そして話は戻る。
「ど、ど、ど、どうするんだよこれ!?」
いくら宝石剣を投影できるとはいえ、元々魔術の才能は零に近い士郎にとって魔法一歩手前の実験の暴走を食い止める術はない。
「慌てないで! 確かに使う宝石は間違ったけど、このままでもつながりそうだわ!」
「確かにそうですわね。このまま実験を続けましょう」
魔術使いである士郎とは違い、生まれついての魔術師である彼女たちにとって、魔法の一端に手が届きそうなところで実験をやめることなどできるはずがなかった。
それに、ここまで進んでしまっては途中で止めたほうがかえって危険かもしれない。士郎はそう考え、見守ることにした。
遠坂とルヴィアは実験を進めていく。
それぞれの宝石がそれぞれの色を放ち、部屋は七色の光に包まれる。
そして──。
「「つながったわ(つながりましたわ)!!」」
平行世界への道がつながったようで、遠坂とルヴィアは大喜びしている。
士郎も安堵のため息をつく。
───と。
宝石がいままで以上の光を放ち始める。
「「へっ?」」
「危ないっ!」
考える間もなく遠坂とルヴィアを突き飛ばす。
その瞬間、士郎は光に包まれ──。
意識が落ちた。
そんなことを、刹那の後ろを歩きながら思い出していた。
(それにしても、魔法使い、ね……)
心の中で呟く。
いきなり魔法使いですか? と聞かれた時は驚かされることとなったが、その後の刹那の言葉には驚かされたというより困惑させられた。
刹那の中では、魔法と魔術は一緒のもののようだ。
(これは、本当に平行世界かもな……)
大師父の地獄の修行で大抵のものには驚かなくなった士郎だが、今回ばかりはそうもいかない。
(ここが本当に平行世界だったら、俺は第二魔法の体現者か?)
それが遠坂とルヴィアにばれた時を想像して、思わず背筋に冷たいものが走るのを感じていると、前を歩く刹那が声をかけていた。
「士郎さん、そろそろ学園です」
顔を上げると目の前には大きな橋があり、その先には大きな西洋風の建物が見える。
「……大きな学園なんだな」
「そうですね。麻帆良学園には初等部から大学まであり、日本でも有数の大きさだと聞いています」
「へぇ、そうなのか」
相槌を打ちつつ橋を渡っていると、一瞬違和感を覚え立ち止まる。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
結界か何かだろうと判断し、再び足を進める。
そういえば学園長が魔法使いだといっていたし、結界の一つや二つあってもおかしくないな、と納得する。
あれ、でもそうするともしかして俺って侵入者? などと考えながらしばらく歩いくと、
「ほう。侵入者の他に誰かいると思ったら桜咲刹那、お前だったか」
正面に小さな人影が悠然たる態度で立っていた。
「……子供?」
「……エヴァンジェリンさんですか」
「知り合いなのか?」
「……クラスメイトです」
「クラスメイト……」
この2人がいるクラスか、と一瞬だけ場違いな想像をする。
そんなことを目の前の男が考えているとは知るはずもなく、エヴァンジェリンは士郎に視線を送る。
「そいつは何者だ? 魔力を感じるところから魔法使いのようだが」
「こちらは……」
言葉を詰まらせる刹那に代わり、士郎が口を開く。
「あー、一応言わせてもらうと俺は魔法使いじゃなくて魔術使いなんだが」
「どっちも同じだろうが。下らんことを言うな」
「……マジかよ」
にべも無いエヴァンジェリンの言葉に、士郎は大きく肩を落とす。
「? まあいい、誰であろうとかまわん。めんどくさいがこれも仕事だからな。刹那、そこをどけ」
「…………」
しかし、刹那は士郎の前から動かない。
同時に、肩を落としていた士郎が真顔に戻る。
「ほう? 貴様が、侵入者を庇うか」
「……さきほど士郎さんには助けていただきましたから」
「そんなことは私の知ったことではない。もう一度言う。そこをどけ」
「…………」
2人の間に険悪な空気が流れる。
それを打ち消すように士郎が刹那の肩に手を置き、口を開く。
「刹那、少し下がっていてくれないかな?」
「ですが……」
心配げな表情の刹那に士郎は笑顔を向ける。
「ちょっと話をするだけだから、心配しなくていいよ」
「……わかりました」
士郎とエヴァンジェリンの顔を交互に見た後、刹那が士郎の後ろに下がる。
それを確認してから、士郎は敵意の無いことを表すために両手をあげる。
「とりあえず、この糸みたいなものをしまってくれないかな? 刹那を巻き込みたくないし、君みたいな女の子とも争いたくない」
「……貴様、何者だ?」
「俺は衛宮士郎。ただの魔術使いだよ」
「そのただの魔術使いがここに何の用だ?」
「ここに来たのは森の中で迷ってたところを刹那がたまたま通りかかって、丁度聞きたいこともあるから学園長のところまで案内してもらっているだけで、別になにかしようって訳じゃない。なんなら調べてくれてもいい」
エヴァンジェリンは両手をあげている士郎を頭から爪先まで観察した後、おもむろに口を開く。
「学園長のじじいのところに行くと言ったな?」
士郎はああ、と頷く。
「……いいだろう。敵意はないようだし、今の状態で貴様の相手をするのは少々面倒そうだ。話はじじいのところで聞いてやる。ついてこい」
それだけ言うと、さっさと建物の方へ歩き出す。
場の緊張感が無くなりほう、と息をはき両手を下ろすのと、刹那が声をかけるのはほぼ同時だった。
「士郎さん、大丈夫ですか!?」
「ああ、なんにもされてないよ」
「そうですか」
安堵のため息をつく刹那に、士郎は申し訳なさそうな顔で言う。
「ごめんな」
「……どうして士郎さんが謝るんですか?」
「俺のせいで面倒ごとに巻き込まれたんだし、エヴァンジェリンちゃんだっけ? クラスメイトと気まずくさせちゃっただろ?」
だからごめんな、と。
当然だという風に士郎は刹那に謝る。
それを不思議そうに見ていた刹那だが、次の瞬間、くす、と微かに笑った。
「あー、刹那? どこか笑うところあったか?」
「いえ、なんでもありません。それより今は学園長のところに行きましょう。ついてきてください」
先を歩き出す刹那に、士郎は首を捻る。
しかし、その向こうでエヴァンジェリンが早く来い、という風な顔を確認し、士郎は急いで歩き出した。
校舎の中に入ってからしばらく歩くと、ある扉の前で刹那が立ち止まる。
「ここが学園長室です」
刹那の言うとおり、その扉の横には学園長室、という文字が書かれた札が掛かっていた。
「わざわざありがとな」
「いえ、気になさらないでください」
「いや、そういう訳にはいかないさ。身元不明で怪しい俺をここまで連れてきてくれただろ? だから、うん、やっぱりありがとう」
そういうと、刹那は表情を和らげる。
「わかりました。受け取っておきます」
「いいからさっさと入れ」
「あ、はい」
不機嫌そうなエヴァンジェリンに促され、刹那は目の前の扉をノックして入っていく。
士郎とエヴァンジェリンもその後に続く。
部屋の中に入ると、そこには椅子に座った老人と30代くらいの男が立っていた。
「おお、刹那君、エヴァンジェリンもご苦労じゃったな。それで、後ろの彼は誰かの?」
老人の質問に、刹那はさっきまでの出来事をおおまかに説明した。
「なるほどのう……。衛宮君、じゃったか。わしの名は近衛近右衛門、この学園の学園長じゃ。今回はうちの生徒を助けてくれてありがとの」
「僕は刹那君の担任の高畑・T・タカミチだ。僕からもお礼を言わせてもらうよ。ありがとう衛宮君」
「あ、いえ。元々俺の油断が原因でしたし、気にしないでください、近衛さん、タカミチさん」
「タカミチでいいよ、衛宮君」
……よかった、話しやすい人たちで、と内心安堵する。
それにしても、関東魔術協会、か。
「さて、衛宮君。どうやらワシに訊きたいことがあるようじゃが?」
「あ、はい。えっとですね……」
刹那とエヴァの言葉からここは平行世界だろうと9割方確信しているが、それでも士郎は祈るように訊ねる。
「……この学園に、魔法使いは何人いますか? いえ、魔法使いは5人以上いますか?」
士郎以外には全く意図が掴めない質問に、学園長とタカミチが顔を見合わせ、刹那とエヴァンジェリンも不思議そうな顔をする。
しかし、士郎の真剣な顔を見て、学園長は口を開く。
「ふむ。聞かれたことには答えんとの。それで答えじゃが、イエスじゃ。わしやタカミチ君にエヴァンジェリンも魔法使いだからのう」
士郎は思わず額に手をやる。
近衛さんが嘘を言っているようには見えず、かといって魔法使いと魔術師の違いも知らないほど素人のようにも見えなかったのだ。
そんな士郎に学園長は訝しげな表情を送る。
「ところで衛宮君、こちらからも質問してもいいかの?」
「あ、はい。もちろんです」
「では衛宮君。なぜ森の中を彷徨っていたのか、教えてもらえるかの?」
「ええと……」
士郎は困ったような顔を浮かべ、背後にいるエヴァンジェリンたちをチラリと見やるが、それを目敏く見つけたエヴァンジェリンがくっくっくと可笑しげに笑う。
「何だ? 私たちに聞かれては困るような話なのか?」
「いや、そういう訳……なのか?」
「なんだそれは……」
皮肉気な言葉だったのだが、その言葉に士郎はうーん、と考え込み、その予想外の反応にエヴァンジェリンも呆れたような声を出す。
「衛宮君、とりあえず言ってみてくれんかの? 話の内容は口外しないようにするでの」
「……わかりました」
覚悟を決める。
一つ、大きく息を吸う。
「俺、別の世界から飛ばされたみたいなんです」
「「「「…………は?」」」」
PR
Comment
無題
第二話更新!
…ということですが、スラスラと読みやすくとてもいい印象を抱きました。
ただ宝石翁が出てくるシーンは若干無理があると思いました。何故いきまり!?と思われても仕方ないと思います。
ですが全体的の総評としては十分面白いと言えます。
では長くなりましたが続きを楽しみにしてます。
…ということですが、スラスラと読みやすくとてもいい印象を抱きました。
ただ宝石翁が出てくるシーンは若干無理があると思いました。何故いきまり!?と思われても仕方ないと思います。
ですが全体的の総評としては十分面白いと言えます。
では長くなりましたが続きを楽しみにしてます。
無題
まぁ、全体的には纏まっていて良いと思う。
ただ、やっぱりゼルレッチの登場がちょっと唐突だったのと、宝石剣をほぼ完璧に投影する、ってのに違和感があったな。
何も段階踏まずにいきなり宝石剣を投影できるようになりました、じゃ少し辛いかも。
宝石剣投影から、平行世界に飛ばされる話をもう少し段階踏ませて、番外に分けるとかしてみたらどうだろう?
ただ、やっぱりゼルレッチの登場がちょっと唐突だったのと、宝石剣をほぼ完璧に投影する、ってのに違和感があったな。
何も段階踏まずにいきなり宝石剣を投影できるようになりました、じゃ少し辛いかも。
宝石剣投影から、平行世界に飛ばされる話をもう少し段階踏ませて、番外に分けるとかしてみたらどうだろう?
お初です
はじめまして。arcadiaからきました。まずは感想から。
すっきり文章で読みやすくていいですね。まだ始まったばかりですが、続きがとても楽しみです。ですが士郎君がどのルートを通ってきたのかははっきり説明するべきだと思います。UBWなのか天杯ルートなのか、はたまた誰ともくっついていないオリジナルルートなのか、それによってかなり見方が(自分は)変わります。
あとこれから話が進むにつれてどんどん辛口な批評が増えると思いますが、がんばってください。どんな良作にも辛口批判はあるものです。
完結目指してがんばってください!
すっきり文章で読みやすくていいですね。まだ始まったばかりですが、続きがとても楽しみです。ですが士郎君がどのルートを通ってきたのかははっきり説明するべきだと思います。UBWなのか天杯ルートなのか、はたまた誰ともくっついていないオリジナルルートなのか、それによってかなり見方が(自分は)変わります。
あとこれから話が進むにつれてどんどん辛口な批評が増えると思いますが、がんばってください。どんな良作にも辛口批判はあるものです。
完結目指してがんばってください!
初めまして
1,2話一度に読ましていただきました。読みやすいし面白いですね。続きが今から楽しみです。
感想呼んでみると魔道元帥殿の出現が唐突過ぎるとのことですが確かにそうだなと自分も思いました。けれど月姫読本とか見てる、唐突な人物といった印象を受けるのでこれもありかなとも思います。ですがその事よりも弟子になったときに凛が嫉妬したりしなかったのかが気になります。
それでは続きを楽しみにしてます
感想呼んでみると魔道元帥殿の出現が唐突過ぎるとのことですが確かにそうだなと自分も思いました。けれど月姫読本とか見てる、唐突な人物といった印象を受けるのでこれもありかなとも思います。ですがその事よりも弟子になったときに凛が嫉妬したりしなかったのかが気になります。
それでは続きを楽しみにしてます
初めまして
正義の赤い魔術使い読ませていただきました。
fateと、というか士郎が主役のクロスでネギまキャラとの初顔合わせが刹那って言うのも珍しく新鮮でした。
エヴァとはそうそうに出会いましたが他のキャラとどう出会っていくのかも楽しみにしております。
後、ゼルレッチの登場が唐突なのと完全な宝石剣の投影について言われてますが。
あのおっさんが唐突なのは元々なようらしいですし宝石剣の投影の方はゼルレッチの修行で宝石剣に関する知識を文字通り叩き込まれたとか考えれば無茶苦茶ではあるけど無理ではないかな~~などと思います。(だったらその知識と完全な宝石剣投影して元の世界に帰れよとか言う物語の根本に関する突っ込みはスルーw)
まぁ、ようはそれぐらいのご都合主義は私は許容範囲内なので気にせず突っ走っていただいて欲しいという事です。
それでは次回も楽しみにしております。
fateと、というか士郎が主役のクロスでネギまキャラとの初顔合わせが刹那って言うのも珍しく新鮮でした。
エヴァとはそうそうに出会いましたが他のキャラとどう出会っていくのかも楽しみにしております。
後、ゼルレッチの登場が唐突なのと完全な宝石剣の投影について言われてますが。
あのおっさんが唐突なのは元々なようらしいですし宝石剣の投影の方はゼルレッチの修行で宝石剣に関する知識を文字通り叩き込まれたとか考えれば無茶苦茶ではあるけど無理ではないかな~~などと思います。(だったらその知識と完全な宝石剣投影して元の世界に帰れよとか言う物語の根本に関する突っ込みはスルーw)
まぁ、ようはそれぐらいのご都合主義は私は許容範囲内なので気にせず突っ走っていただいて欲しいという事です。
それでは次回も楽しみにしております。
無題
ゼルレッチ唐突振りを意識的に描いたのではなく、拙速さからくる描写不足の所為で、違和感というかご都合臭がするんだと思います
あんまりな擁護は作者さんにとっても良いことではないと思いますよ?
ともあれ正義の赤い魔術使いは期待できる作品であると思いますので、頑張ってくださいね!
あんまりな擁護は作者さんにとっても良いことではないと思いますよ?
ともあれ正義の赤い魔術使いは期待できる作品であると思いますので、頑張ってくださいね!
無題
異世界に飛ぶという自体がもはや異常だしそこはご都合主義じゃないと無理があると思うし、そこに設定とかでケチをつけるのは間違いだと思うのだが・・・
まぁ、そんなことはおいといて。
読んでみての感想ですがおもしろかったです。これから先が楽しみな作品だと思います。これからも応援しております。
まぁ、そんなことはおいといて。
読んでみての感想ですがおもしろかったです。これから先が楽しみな作品だと思います。これからも応援しております。
無題
本編でも宝石剣の投影は英霊の腕とか凛が持ってた設計図とかイリヤのサポートとかあって不完全版が完成したようなきもする。。。大分前のことなんで変なのが混ざってるかもしれないけど
せめて、本編の不完全版以下の中途半端なパチモノっぽいの作って、それを実物とするべく実験中に飛ばされるとかの方がいい気もするし・・・
エセ無限魔力炉とかで魔力の回復がちょっとだけ早くなりますよ程度とか
まぁ他の方も言ってますが、弟子になった事により、確実にあると思われる軋轢(この場合、凛とルヴィアの嫉妬とか時計塔の陰謀とか)がまったく描写されてなくスルーされてるのももったいないなぁと思います
ま、ネギま!とのクロスなんでそれをスルトただのFateの二次創作なんですけどね(笑
せめて、本編の不完全版以下の中途半端なパチモノっぽいの作って、それを実物とするべく実験中に飛ばされるとかの方がいい気もするし・・・
エセ無限魔力炉とかで魔力の回復がちょっとだけ早くなりますよ程度とか
まぁ他の方も言ってますが、弟子になった事により、確実にあると思われる軋轢(この場合、凛とルヴィアの嫉妬とか時計塔の陰謀とか)がまったく描写されてなくスルーされてるのももったいないなぁと思います
ま、ネギま!とのクロスなんでそれをスルトただのFateの二次創作なんですけどね(笑
><b
失礼、上の感想は書きかけで投稿しちゃいました;;
1-2話読ませてもらいました^^
読んでみてこれは将来性があるな。っとおもいました。
特に他のSSだと桜咲が同行しているのに問答無用で戦闘を開始するエヴァがいますがそうならないところに特に好感が持てました。
がんばってください!期待させてもらいます!!><」
1-2話読ませてもらいました^^
読んでみてこれは将来性があるな。っとおもいました。
特に他のSSだと桜咲が同行しているのに問答無用で戦闘を開始するエヴァがいますがそうならないところに特に好感が持てました。
がんばってください!期待させてもらいます!!><」
無題
ついでに言えば第2魔法は並行世界の移動ではなく、運営ですから。
ゼルレッチに弟子入りって最低要素とまで言われるのに敢えてそれをやるか。豪胆なお人だこと。魔術師として才能のない士郎を弟子入りさせた所で剣製しか能のない士郎二なにを詰め込んだのやら
ゼルレッチに弟子入りって最低要素とまで言われるのに敢えてそれをやるか。豪胆なお人だこと。魔術師として才能のない士郎を弟子入りさせた所で剣製しか能のない士郎二なにを詰め込んだのやら
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