ネギまとFateのクロスオーバー小説を書いていこうと思ってます。
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踏み込む足の音。
吐き出す白い息。
空を舞う竹刀はタクトに、冬の澄んだ空気にそれらは実直なリズムを奏でる。
しばし演舞は続くが、
「ふっ──!」
一際鋭い気合と共に放たれた一撃を以ってそれも一時休演。
額に光る汗をタオルで拭い、振り返る。
「おはよう刹那」
「……あ、おはようございます」
しばし呆けたように見つめた後慌てて竹刀袋ごと挨拶する刹那だったが、士郎は特に気にした様子もなく訊ねる。
「いつもこれくらいに起きてるのか?」
「いえ、今日は目が覚めてしまったので剣の稽古をしようかと思ったのですが、士郎さんは?」
「俺は、まあ日課みたいなもんだ」
「いつもこの時間から鍛錬を?」
「ああ」
そこで士郎は刹那のさきほどの台詞と、肩に背負った竹刀袋に改めて気付く。
「っと、刹那もこれから鍛錬だったな。引きとめて悪い」
「あ、いえ、そんなことはないんですが……。士郎さん、もしよろしければ私に稽古をつけてくれませんか?」
「俺が、刹那に?」
「はい」
歯切れの悪い態度から一転はっきりとした口調と共に首肯する刹那に、今度は士郎が頭を掻きながら言葉を濁す。
「稽古をつけるって言ってもな……」
士郎はしばし考え込んだ後、
「実際に打ち合う試合形式でいいか?」
「はい、ぜひ」
頷き、竹刀を取り出す刹那に士郎も竹刀を構え、深呼吸。
刹那と向き合う。
「では」
「────」
無言で頷く。
瞬間、乾いた音が響いた。
昼休みも過ぎた午後の一時。
士郎がいまだ慣れない校舎を見て回っている最中に響いた花火に興味を惹かれ、階段をのぼる。
屋上へと続く扉に手をかけ、
「よろしいですわ! このケンカ、絶対勝ちますわよ!」
「OK!」
開くと同時に、士郎の耳に雪広と明日菜の物騒な声が届く。
「………」
ほとんどの生徒の意識がケンカ──もといドッジボールに集中する中、ドアノブを握ったまま固まる士郎に声がかかる。
「おや、衛宮殿ではござらんか」
「あ、ああ、長瀬か」
「こんにちはでござるよ」
名前を呼ばれようやく正気を取り戻した士郎は、ドアノブから手を離し声の元へと向かう。
長瀬に歩み寄ると、同じく腰を下ろす刹那、壁に寄りかかる龍宮の目礼に対する応えもそこそこに問う。
「これは何事? 向こうは中学生じゃないよな?」
「相手は高等部でござるよ。聞いたところによれば、昼休みに場所の取り合いで揉め事があったとか。その場は高畑殿が仲裁に入って事なきを得たらしいが、どうやらその仕返しのようでござるな」
「……はあ」
士郎は呆れたといわんばかりにため息をつくと、足取りも重くコート側まで近づく。
「あー、お互い、少しいいかな」
「士郎?」
副担任の姿を認め、過熱気味だった明日菜もようやく止まる。
一方、突然現れた長身の男に訝しげな視線を向ける高等部の生徒たちだったが、そのうちの1人が銀髪に気付き耳打ちし、理解の色が広がると、少女が歩み出る。
「はじめまして。2-Aの副担任ということでいいでしょうか?」
「ああ、そうだ」
「それで、何か御用でしょうか? まさか正々堂々、スポーツでの勝負をやめろ、と言われるのですか?」
「正々堂々、ねぇ」
尊大とも取れる物言いにも顔色一つ変えず、双方のコートを冷静に見てからの台詞に高等部側の生徒の頬がピクリ、とひくつくのを士郎は見て取る。
「……まあ、止めたい山々なんだけどな、お互いそれじゃ収まりがつかないんだろ?」
「もちろんよ!」
「当然!」
「……顔や頭を狙うのはなし、後怪我をさせるような真似も禁止。それはいいな?」
血気盛んな返答に内心嘆息しつつ提示した条件に双方とも頷くのを確認し、士郎は続ける。
「それじゃお互い正々堂々頑張ってくれ。それとこれは2-Aの副担任としての助言だけど、味方が多すぎると動きにくくなるから、一箇所に固まらないほうがいいぞ」
「くっ───」
悔しそうな呻き声と、慌てて散らばるように指示を出す明日菜の声を背後に、士郎はコート脇を離れ、長瀬たちの隣に腰を下ろすと、今度は疲れと呆れが綯い交ぜになった嘆息をもらす。
「やれやれ……」
「まあまあ。本当にケンカになるよりはずっといいでござろう?」
「それはそうだけどな……。けどまあ、よくあの調子でケンカにならなかったな」
「実際なりかけたでござるが、ネギ坊主の提案でスポーツ対決ということになったでござるよ」
「へぇ」
士郎は感心した目で2-Aのコートに立つネギを見、そのまま時折届く、バシッ、という捕球音をアクセントに目の前の光景を見守る。
しばし飛び交うボールの行方を見つめた後、士郎は視線を己の背丈ほどもある野太刀を横手に腰を下ろす刹那に落とす。
「刹那、手首の怪我、大丈夫か?」
「あ、はい」
「さっきも言ったけど、すまなかった」
「士郎さん、頭を上げてください。これくらい何ともありませんので」
「ほう、その怪我は衛宮殿が関わっていたでござるか」
包帯の巻かれた腕をそっと上げ、何でもないとアピールする刹那の横から、興味深々といった面持ちで顔をのぞかせる長瀬に士郎は苦笑いと共に説明する。
「朝、稽古に付き合ってもらった時少し。学校もあるし軽くやるつもりが、つい熱が入ってな」
「いえ、それは私が──」
「まあ、そういう訳だ」
「そうでござったか」
浮かべた表情はそのままに、割って入ろうとする刹那を遮り話をまとめる士郎に長瀬は頷き、
「衛宮殿」
名前を呼ぶ。
「ん?」
「少し訊きたいことがあるのだが、いいでござるか?」
「ああ、なんだ?」
「ありがとうでござるよ。では、」
長瀬は細目を微かに開き、身には僅かに張りつめた空気を纏い、問う。
「衛宮殿は、何者でござるか?」
「……俺が何者か、か」
「楓!」
適当な言葉を探す士郎に代わり刹那が咎めるように厳しい声を上げるが、
「刹那」
それを、いままで白色の壁に背を預け沈黙を守っていた龍宮がチラリと士郎に視線を送りつつ宥め、諭すように話し出す。
「私たちはお前と違って詳しいことを知らないんだ、知りたいと思うのは当然だろう。しかも相手が衛宮先生ほどの人物ならなおさらだ」
「しかし──」
「刹那」
なおも言い募ろうとする刹那を片手で制し、士郎は言うべき言葉を見つけ、長瀬と龍宮に向けて口を開く。
「長瀬。確か俺が何者か、だったな」
頷く長瀬に、士郎は微かな笑顔で告げる。
「ただの教師だよ。少しだけ他の人と違うところがある、な」
長瀬はしばし士郎の目を覗き込み、
「そうでござるか」
眸の色に満足がいったようで、身に纏った空気を弛緩させる。
「不躾なことを聞いてすまなかったでござるよ」
「気にするな」
お互い微笑を浮かべ、士郎は視線を刹那へと移す。
「刹那も、そういうことだから、あんまり気にするな」
「それはわかっていますが……。ですが、もう少し聞き方というものがあるだろうと──」
「刹那らしいな」
士郎は苦笑しつつ、その姿にふと思い立ったことを口にする。
「刹那は、少し印象が変わったな」
「ほほう。それはどういった具合にでござるか?」
「そうだな、少し柔らかくなった感じかな。まあ、最初は今にも斬りかかられそうな雰囲気だったから当然か」
「なるほどなるほど」
頷きつつ口端を緩ませ意味ありげな視線を送る長瀬に、刹那は若干慌てて言葉を紡ぐ。
「あれは仕事中だったからで今とは状況が……、って龍宮、何が可笑しい」
「なに、その時の光景が目に浮かぶようだと思ってね」
刹那のジト目にもどこ吹く風、龍宮は口を動かす。
「それで、次は何時だ? 私としても衛宮先生の実力を一度見ておきたいんでな」
「今日はたまたまだ。次の予定はない」
「何だ、相手をしてもらえばいいじゃないか。一人でやるよりいいだろう?」
「確かに士郎さんに相手をしていただければ学ぶところは多いが、しかし士郎さんには士郎さんの鍛錬が──」
「いや、俺は別にかまわないぞ。それより、一人で、って言ってたけど、もしかしてずっと一人で修行してたのか?」
「いえ、こちらへ来てからも剣を教えてもらった方はいるんですが、その方も忙しいようで」
「なるほど。……こちらに来てから、か」
「? 何かいいましたか?」
続けた小さな呟きは届かず聞き返す刹那に、士郎はなんでもない、と言葉を濁し、当初の話へと引き戻す。
「それで、どうする? 俺でよければ稽古の相手になるけど」
刹那は一度士郎の顔色を窺い、それから、
「……士郎さんの迷惑でないのなら、ぜひよろしくお願いします」
「了解。こっちこそよろしくな」
二人は頭を下げあう。
時を同じくして、長瀬が口を開く。
「どうやら、あっちも丁度終わったようでござるな」
その言葉が示す通り、コートの上ではネギの小さな体が胴上げされ宙を舞う。
士郎はぐるっと見回すと、立ち上がる。
「ん、けが人もいないようだし、俺もそろそろ戻るかな」
「ご苦労様でござるよ」
「刹那、稽古は手のこともあるし明後日からでいいか?」
「はい」
「それじゃ三人とも、また後でな」
三者三様の礼に送られ踵を返す銀髪の副担任にいまだざわめきの収まらないコート上の生徒たちも気付き、士郎に向けて手を振る。
「士郎さんー、アドバイスありがとなー」
その中、一際大きく左右に振られる木乃香の手と京訛りの声が士郎に届く。
「どういたしまして」
それに手を振って応えてから、士郎は再び歩みを進める。
ざわめきが背後になった頃、士郎はさきほどの刹那の台詞と名簿に記された文字を思い返し、一人呟く。
「京都神鳴流。京都、か」
空を舞う竹刀はタクトに、冬の澄んだ空気にそれらは実直なリズムを奏でる。
しばし演舞は続くが、
「ふっ──!」
一際鋭い気合と共に放たれた一撃を以ってそれも一時休演。
額に光る汗をタオルで拭い、振り返る。
「おはよう刹那」
「……あ、おはようございます」
しばし呆けたように見つめた後慌てて竹刀袋ごと挨拶する刹那だったが、士郎は特に気にした様子もなく訊ねる。
「いつもこれくらいに起きてるのか?」
「いえ、今日は目が覚めてしまったので剣の稽古をしようかと思ったのですが、士郎さんは?」
「俺は、まあ日課みたいなもんだ」
「いつもこの時間から鍛錬を?」
「ああ」
そこで士郎は刹那のさきほどの台詞と、肩に背負った竹刀袋に改めて気付く。
「っと、刹那もこれから鍛錬だったな。引きとめて悪い」
「あ、いえ、そんなことはないんですが……。士郎さん、もしよろしければ私に稽古をつけてくれませんか?」
「俺が、刹那に?」
「はい」
歯切れの悪い態度から一転はっきりとした口調と共に首肯する刹那に、今度は士郎が頭を掻きながら言葉を濁す。
「稽古をつけるって言ってもな……」
士郎はしばし考え込んだ後、
「実際に打ち合う試合形式でいいか?」
「はい、ぜひ」
頷き、竹刀を取り出す刹那に士郎も竹刀を構え、深呼吸。
刹那と向き合う。
「では」
「────」
無言で頷く。
瞬間、乾いた音が響いた。
昼休みも過ぎた午後の一時。
士郎がいまだ慣れない校舎を見て回っている最中に響いた花火に興味を惹かれ、階段をのぼる。
屋上へと続く扉に手をかけ、
「よろしいですわ! このケンカ、絶対勝ちますわよ!」
「OK!」
開くと同時に、士郎の耳に雪広と明日菜の物騒な声が届く。
「………」
ほとんどの生徒の意識がケンカ──もといドッジボールに集中する中、ドアノブを握ったまま固まる士郎に声がかかる。
「おや、衛宮殿ではござらんか」
「あ、ああ、長瀬か」
「こんにちはでござるよ」
名前を呼ばれようやく正気を取り戻した士郎は、ドアノブから手を離し声の元へと向かう。
長瀬に歩み寄ると、同じく腰を下ろす刹那、壁に寄りかかる龍宮の目礼に対する応えもそこそこに問う。
「これは何事? 向こうは中学生じゃないよな?」
「相手は高等部でござるよ。聞いたところによれば、昼休みに場所の取り合いで揉め事があったとか。その場は高畑殿が仲裁に入って事なきを得たらしいが、どうやらその仕返しのようでござるな」
「……はあ」
士郎は呆れたといわんばかりにため息をつくと、足取りも重くコート側まで近づく。
「あー、お互い、少しいいかな」
「士郎?」
副担任の姿を認め、過熱気味だった明日菜もようやく止まる。
一方、突然現れた長身の男に訝しげな視線を向ける高等部の生徒たちだったが、そのうちの1人が銀髪に気付き耳打ちし、理解の色が広がると、少女が歩み出る。
「はじめまして。2-Aの副担任ということでいいでしょうか?」
「ああ、そうだ」
「それで、何か御用でしょうか? まさか正々堂々、スポーツでの勝負をやめろ、と言われるのですか?」
「正々堂々、ねぇ」
尊大とも取れる物言いにも顔色一つ変えず、双方のコートを冷静に見てからの台詞に高等部側の生徒の頬がピクリ、とひくつくのを士郎は見て取る。
「……まあ、止めたい山々なんだけどな、お互いそれじゃ収まりがつかないんだろ?」
「もちろんよ!」
「当然!」
「……顔や頭を狙うのはなし、後怪我をさせるような真似も禁止。それはいいな?」
血気盛んな返答に内心嘆息しつつ提示した条件に双方とも頷くのを確認し、士郎は続ける。
「それじゃお互い正々堂々頑張ってくれ。それとこれは2-Aの副担任としての助言だけど、味方が多すぎると動きにくくなるから、一箇所に固まらないほうがいいぞ」
「くっ───」
悔しそうな呻き声と、慌てて散らばるように指示を出す明日菜の声を背後に、士郎はコート脇を離れ、長瀬たちの隣に腰を下ろすと、今度は疲れと呆れが綯い交ぜになった嘆息をもらす。
「やれやれ……」
「まあまあ。本当にケンカになるよりはずっといいでござろう?」
「それはそうだけどな……。けどまあ、よくあの調子でケンカにならなかったな」
「実際なりかけたでござるが、ネギ坊主の提案でスポーツ対決ということになったでござるよ」
「へぇ」
士郎は感心した目で2-Aのコートに立つネギを見、そのまま時折届く、バシッ、という捕球音をアクセントに目の前の光景を見守る。
しばし飛び交うボールの行方を見つめた後、士郎は視線を己の背丈ほどもある野太刀を横手に腰を下ろす刹那に落とす。
「刹那、手首の怪我、大丈夫か?」
「あ、はい」
「さっきも言ったけど、すまなかった」
「士郎さん、頭を上げてください。これくらい何ともありませんので」
「ほう、その怪我は衛宮殿が関わっていたでござるか」
包帯の巻かれた腕をそっと上げ、何でもないとアピールする刹那の横から、興味深々といった面持ちで顔をのぞかせる長瀬に士郎は苦笑いと共に説明する。
「朝、稽古に付き合ってもらった時少し。学校もあるし軽くやるつもりが、つい熱が入ってな」
「いえ、それは私が──」
「まあ、そういう訳だ」
「そうでござったか」
浮かべた表情はそのままに、割って入ろうとする刹那を遮り話をまとめる士郎に長瀬は頷き、
「衛宮殿」
名前を呼ぶ。
「ん?」
「少し訊きたいことがあるのだが、いいでござるか?」
「ああ、なんだ?」
「ありがとうでござるよ。では、」
長瀬は細目を微かに開き、身には僅かに張りつめた空気を纏い、問う。
「衛宮殿は、何者でござるか?」
「……俺が何者か、か」
「楓!」
適当な言葉を探す士郎に代わり刹那が咎めるように厳しい声を上げるが、
「刹那」
それを、いままで白色の壁に背を預け沈黙を守っていた龍宮がチラリと士郎に視線を送りつつ宥め、諭すように話し出す。
「私たちはお前と違って詳しいことを知らないんだ、知りたいと思うのは当然だろう。しかも相手が衛宮先生ほどの人物ならなおさらだ」
「しかし──」
「刹那」
なおも言い募ろうとする刹那を片手で制し、士郎は言うべき言葉を見つけ、長瀬と龍宮に向けて口を開く。
「長瀬。確か俺が何者か、だったな」
頷く長瀬に、士郎は微かな笑顔で告げる。
「ただの教師だよ。少しだけ他の人と違うところがある、な」
長瀬はしばし士郎の目を覗き込み、
「そうでござるか」
眸の色に満足がいったようで、身に纏った空気を弛緩させる。
「不躾なことを聞いてすまなかったでござるよ」
「気にするな」
お互い微笑を浮かべ、士郎は視線を刹那へと移す。
「刹那も、そういうことだから、あんまり気にするな」
「それはわかっていますが……。ですが、もう少し聞き方というものがあるだろうと──」
「刹那らしいな」
士郎は苦笑しつつ、その姿にふと思い立ったことを口にする。
「刹那は、少し印象が変わったな」
「ほほう。それはどういった具合にでござるか?」
「そうだな、少し柔らかくなった感じかな。まあ、最初は今にも斬りかかられそうな雰囲気だったから当然か」
「なるほどなるほど」
頷きつつ口端を緩ませ意味ありげな視線を送る長瀬に、刹那は若干慌てて言葉を紡ぐ。
「あれは仕事中だったからで今とは状況が……、って龍宮、何が可笑しい」
「なに、その時の光景が目に浮かぶようだと思ってね」
刹那のジト目にもどこ吹く風、龍宮は口を動かす。
「それで、次は何時だ? 私としても衛宮先生の実力を一度見ておきたいんでな」
「今日はたまたまだ。次の予定はない」
「何だ、相手をしてもらえばいいじゃないか。一人でやるよりいいだろう?」
「確かに士郎さんに相手をしていただければ学ぶところは多いが、しかし士郎さんには士郎さんの鍛錬が──」
「いや、俺は別にかまわないぞ。それより、一人で、って言ってたけど、もしかしてずっと一人で修行してたのか?」
「いえ、こちらへ来てからも剣を教えてもらった方はいるんですが、その方も忙しいようで」
「なるほど。……こちらに来てから、か」
「? 何かいいましたか?」
続けた小さな呟きは届かず聞き返す刹那に、士郎はなんでもない、と言葉を濁し、当初の話へと引き戻す。
「それで、どうする? 俺でよければ稽古の相手になるけど」
刹那は一度士郎の顔色を窺い、それから、
「……士郎さんの迷惑でないのなら、ぜひよろしくお願いします」
「了解。こっちこそよろしくな」
二人は頭を下げあう。
時を同じくして、長瀬が口を開く。
「どうやら、あっちも丁度終わったようでござるな」
その言葉が示す通り、コートの上ではネギの小さな体が胴上げされ宙を舞う。
士郎はぐるっと見回すと、立ち上がる。
「ん、けが人もいないようだし、俺もそろそろ戻るかな」
「ご苦労様でござるよ」
「刹那、稽古は手のこともあるし明後日からでいいか?」
「はい」
「それじゃ三人とも、また後でな」
三者三様の礼に送られ踵を返す銀髪の副担任にいまだざわめきの収まらないコート上の生徒たちも気付き、士郎に向けて手を振る。
「士郎さんー、アドバイスありがとなー」
その中、一際大きく左右に振られる木乃香の手と京訛りの声が士郎に届く。
「どういたしまして」
それに手を振って応えてから、士郎は再び歩みを進める。
ざわめきが背後になった頃、士郎はさきほどの刹那の台詞と名簿に記された文字を思い返し、一人呟く。
「京都神鳴流。京都、か」
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Comment
無題
10話お待ちしておりました。
今回は特に士郎が目立って関与したって所はないですね~。
でも着実にフラグポイントを稼いでるエミヤンが憎いですw
京都もしくは神鳴流に奇妙な反応をしてる士郎ですが、それが修学旅行先だからなのかそれとも個人的に何かあるからなのか?・・・気になります
今回は特に士郎が目立って関与したって所はないですね~。
でも着実にフラグポイントを稼いでるエミヤンが憎いですw
京都もしくは神鳴流に奇妙な反応をしてる士郎ですが、それが修学旅行先だからなのかそれとも個人的に何かあるからなのか?・・・気になります
無題
10話更新お疲れ様でした。
士郎と刹那の訓練風景、怪我をさせてしまった場面気になりますね。
今回は士郎の活躍はなかったですね。龍宮、長瀬と組んでの戦いぜひ見られることを願ってこの辺で。
それでは次回も楽しみにしています。
士郎と刹那の訓練風景、怪我をさせてしまった場面気になりますね。
今回は士郎の活躍はなかったですね。龍宮、長瀬と組んでの戦いぜひ見られることを願ってこの辺で。
それでは次回も楽しみにしています。
無題
面白いですが更新速度がどうににもなぁ~ このままだと修学旅行編や学祭編のような盛り場に差し掛かる前に放置になりそうでどうにも不安です。多々あるネギまとFateのクロスで修学旅行編終了してる物は今んとこ数えるぐらいしかないですからねぇ。お忙しそうですが出来るだけ頑張って欲しいところです。
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